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入浴死は年間1万9千人!交通事故死の4倍以上!!
今回も独断と偏見で、旧暦のお話から、入らせていただきます。
穀雨 末候 牡丹華さく(ぼたんはなさく)
八十八夜の新茶
茶摘(ちゃつみ)って歌 (^^♪ ご存知ですよね…『夏も近づく八十八夜、野にも山にも若葉が茂る・・・』で始まる、初夏に見られる茶摘みの光景を歌った歌にあるとおり、立春から数えて八十八日目が、旧暦の春の終わり。立夏を間近に控えた八十八夜になります(閏年や立春が二月三日の年などは、五月一日)。
八十八と書くと、ちょうど米の字になりますが、霜が止んで、田植えや種蒔きがはじまる農事において大切な時期がこのころです。
また新茶の季節でもあります。五行思想で春は、すくすくとした木(もく)の気の季節。そんな春じゅうの健やかな気が、八十八夜の新茶にはいっぱいに詰まっていることから、この日に摘んだ一番茶は長寿のお茶といわれてきました。
旧暦の季節、七十二候によると穀雨の末候は、牡丹華さくです。およそ四月三十日から五月四日まで、牡丹の花が咲きだすころという意味の華やかな季節で春を締めくくります。
入浴死は年間1万9千人!交通事故死の4倍以上!!溺死は10年で7割増
毎年、交通事故死の4倍も発生する入浴死を防ぐには「暖かい家」をつくること
入浴関連死の実態
図1
2020年の今年の話題は新型コロナウイルスでもちきりです。現在日本では、半年間で300人台の方が亡くなっています。
ところが、およそ入浴中に意識障害を起こしておぼれたり、脳卒中や心筋梗塞を発症したりして急死するとされる入浴関連死が全国で年間約1万9,000人に上るとの推計を「厚生労働省指定型科学研究・入浴関連事故研究班」が発表しました。(2016年)
最初に入浴関連死に関する本格的な調査があったのは今から、およそ20年前(2000年)の入浴事故防止対策調査研究(東京救急協会)によるものでした。当時は年間1万4,000人が入浴中に急死していると報じられ、話題を呼びました。
図2
7年前(2013年)には、東京都健康長寿医療センター研究所が、年間の入浴関連死を、21%増の1万7,000人と発表しています。13年間で21%増だったものが、その後のわずか3年間で12%増と、加速していることがわかります。
今回の厚生労働省研究班の調査では、救急車で運ばれた患者数から推計した入浴中の事故死は、全国で年間に約1万9,000人とされています。
このうち、浴槽での溺死者数は平成26年に4,866人で、平成16年と比較し、10年間で約1.7倍に増加しました(図1)。
図3東京都23区における入浴中事故死
その9割が65歳以上の高齢者で、特に75歳以上の年齢層で増加しています(図2)。
高齢者の人口が増えるに従い、入浴中の事故死が増えてきているのだと考えられます。
また、入浴中の事故死の数と外部の気温には、明らかに相関がみられます。
入浴中の事故死は冬季に集中して多く(図3)、12月から2月にかけて全体の50%が発生しています。
入浴中の事故は、ほとんどが浴層内で起きており、熱いお湯に肩までつかるという日本固有の入浴スタイルが影響していると考えられています。東京都健康長寿医療センター研究所の高橋龍太郎副所長によると、
- ①寒い脱衣所や浴室で急に体温が奪われ血管が縮んで血圧が上がる
- ②湯船に入った直後も熱さが刺激となって血圧が上がり
- ③その後は血管が広がって急速に下がる
こうした血圧の急変動が意識障害の引き金になり、脳卒中などを発症しておぼれる恐れがある、といいます。
また、高温・長湯による「熱中症による意識障害で溺死」もあり得るといいます。
高齢者入浴中突然死症候群(SEDB-Sudeden Elderyly Death Syndrome in Bathing)
京都府立医科大学法医学の安原教授はこれらの現象を「高齢者入浴中突然死症候群」と名づけて次のような特徴を挙げています。
- ①75歳以上で頻発
- ②気温の低い冬に集中
- ③42℃以上の高温で長湯
- ④血圧変動と発汗による循環器系疾患や脳虚血が多い
- ⑤欧米のようなシャワー浴ではなく、日本式の高温・長時間・肩までつかる入浴法で多発する
- ⑥脱衣場と浴室との極端な温度差のある住宅構造で生じており、建築災害としての側面もある
上記⑥のように、室内温度差を「建築災害」という激しい表現で指摘されたのは初めてではないでしょうか。
安全軽視の自動車販売は、犯罪。では「寒い家」を建てるのは?
冬が来るたび寒い思いをする住まい手からは、今のところ「こんな家を誰が建てたの?」という声をあげてはいません。しかしながら、建築関係者の中でどれだけの人が自分の責任を感じているでしょうか。
20年ほど前から、家庭内事故死と交通事故死は、よく比較されてきました。しかしこの20年、自動車業界はエアバックやシートベルト義務化に加えて障害物や人間を検知して衝突を回避する「自動ブレーキ機能」などの安全装置の普及で、交通事故死は年間5千人以下まで半減させてきました。
いっぽう住宅業界は何をしてきたでしょうか。「快適な家では体がなまってしまう。四季を感じるくらいの、ほどほどの断熱性能のほうが体が丈夫になる」などと言うビルダーや設計士がいまだに存在するのが現実です。
「シートベルトやエアバックなしの車の方が緊張して上手に運転できる」といって安全対策をしない車を販売するような自動車メーカーは、いくら探してもありません。それは犯罪です。
自分の建てた家で、お客さまの家族がヒートショックで浴室やトイレで亡くなった時、葬式に参列するビルダーや建築家の何人が、「自分の責任だ…」と思っているでしょうか。
もはや、「知らなかった」では済まされません。
近い将来、寒い浴室や寝室をつくるのは『犯罪だ』と責められるかもしれません。
私たちは、これから家を建てるお客さまには「家の性能によって、その家に暮らすご家族や住み継いでいく子孫の寿命が変わる」ということを、しっかりご理解いただいたうえで、家づくりを進めていただきたいのです。
入浴死や高齢者が要介護となる原因は、「MRT」の低さにあった
MRTとは? ~温度計で測って26℃の家より、室温18℃の家のほうがあたたかい?
MRTとは平均輻射(ふくしゃ)温度の事で、私たちの体を取り囲んでいる天井、壁、窓、床、家具など全ての表面温度の平均温度のことです。冬の朝、床は5℃、壁は10℃、窓ガラスは3度のとき、面積を考慮して平均が8℃とすると、MRTが8℃であると表現されます。
体感温度の求め方を数式で表すと、『体感温度=(室温+MRT)÷2』となります。エアコンで空気の温度(温度計で測る温度)が26℃になったとしても、MRTが8℃だと、(26℃+8℃)÷2=17℃ となり、体感温度は17℃なります。いっぽう、しっかりと断熱した家で蓄熱床暖房などの適切な暖房を行った家でMRTが20℃あれば、空気の温度が18℃しかなくても体感温度は19℃となります。
快適・安全な家を普及して「健康寿命」を伸ばそう
日本よりはるかに寒いカナダやスウェーデンと比べても、脳卒中死亡率で2倍以上、入浴中の死亡事故にいたっては20倍も死亡率が高くなっています(人口10万人あたりの比較)。
その原因は暖房・給湯エネルギーの国別比較を見れば明らかです。
日本は韓国と比べて1世帯あたりで3分の1しか暖房エネルギーを消費していないことがわかります。
韓国はオンドルや蓄熱床暖房(温水式)による24時間全館暖房システムを早くから確立してきました。日本では、石油ストーブかエアコンで部屋ごとに必要な時だけ暖房、という習慣のおかげでMRT(平均輻射温度)のとても低い室内環境の中で暮らしてきました。
耐え難い寒さではないものの、体内(筋肉や血液)から熱を奪う「冷輻射」によって体の芯から冷えてしまい、『低体温』という最悪の免疫低下状態が日常化しています。この住環境が、神経痛や高血圧などの原因になっていることは明らかです。
いっぽう、日本の家庭における給湯エネルギー消費量は世界でもトップクラスです。「日本人はお風呂好き」という見方もありますが、寒い家で冷え切った体を温める、という目的が明白です。
そして熱い湯に長時間浸かることで、入浴事故が韓国の5倍、北欧の20倍という極端な結果につながっています。
日本の家の暖房のあり方を真剣に考えるべきではないでしょうか。
ビミョーな言葉研究★日本語のセンスを磨こう
今回のビミョー…「計る・測る・量る」(その1~数えるケース)の使い分け
●計る
数量や時間などを数える。
【例】時間を計る
●測る
長さ・高さ・深さ・速さ・距離・面積などを数える。
【例】水深を測る・標高を測る・面積を測る
●量る
重さ・分量・容積などを数える。
【例】目方を量る・升で量る・量り売り
今回は「数える」の意の「ハカル」がテーマです。「計る」は基本的にすべてに使えます。
『大辞林』(三省堂)も、『類語大辞典』(講談社)も、「計る」をメインに持ってきて、長さや面積の場合は「測る」、重さや容積の場合は「量る」とも書くとなっています。
さて、「計る・測る・量る」には、「数える」以外の意味もあります。それはまた今度取り上げます。
【参考】記者ハンドブック(新聞)では、「計る・測る・量る」を使い分け、標準用字用例辞典(官公庁)では、すべて平仮名で表記します。
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