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No.12 『屋根の機能って雨、風を凌ぐだけですか?』(2006.8.5)
長かった梅雨もやっと明けて、やっと夏らしくなってきました。
昨日は38℃の気温を記録するところがずいぶんあったようです。
実際、気温は高く、日差しは厳しかったと思いますが湿度が低かったせいでしょうか、 私にはそれほど暑く感じられませんでした。
私の感覚が鈍いのでしょうか?
暑さ、寒さに最も影響を及ぼす家の部位はどこかと聞かれ、やはり屋根だと思いますとお答えしました。
すると当然どんな屋根が良いのだろうかと聞かれ、屋根談義になりました。
日本を代表する屋根といえば瓦です。
それと、今ではほとんど一般的には使われていませんが、茅葺き屋根ではないでしょうか。
瓦屋根の家の小屋裏と、コロニアル屋根(アスベストで問題になった屋根材、現在ではノンアスベストタイプのコロニアルネオが使用されている)の小屋裏とで夏場の温度比較をすると、気温30℃以上では10℃以上の差が計測されます。
茅葺き屋根ではいうまでもなくその断熱性能に優れている瓦をはるかに凌ぎます。
瓦は重いことが欠点だと言われますが、茅は素材がもともとたいへん軽いので 耐震性においても優れているようです。
***現在の瓦は従来の瓦に比べ重量を3分の1に軽量化されたものも普及されています***
私の両親の故郷は栃木県ですが、そこでは茅葺きを超える屋根材が使用されていたことを知りました。
栃木県は、かつて日本一麻の栽培が盛んなところでした。
その麻を取るとオガラという副産物が出ます。
これが太目のストローのような構造になっています。
それを屋根に敷き詰めて屋根材として使用していたそうです。
茅葺き屋根ならぬオガラ葺き屋根ということになります。
名前は私が勝手に付けさせて頂きましたので綺麗な響きはありませんが、これはすごいだろうなと思いました。
屋根の上に天然素材のストローが何千本、何万本も乗っているのです。
どのようにスゴイかというと、そのストロー状の一本、一本の穴に蜜蜂が卵を生むらしいのです。
やはりそこで生まれ育った叔父さんの話では、子供の頃にその天然ストローの中の蜂蜜をオヤツ代わりに吸い取っては大人に怒られていたそうです。
蜜蜂の巣というのは素晴らしく良くできていて、外気温が巣の中にはほとんど伝わらないそうです。
オガラ葺き屋根は蜜蜂の巣のような断熱性能を持っているために、そこに卵を産みつけて蜜を蓄えて育てれば、蜜蜂もわざわざ大変な苦労をして巣をつくる必要がありません。
何故か蜜蜂はそれを知っていたようです。
ようは、オガラ葺き屋根は蜂の巣の性能を持った屋根ということになります。
今このような屋根は手間がかかるのと効率重視のために数が少なくなってしまったので、余計使用するのは困難になっています。
ところがよくよく考えてみると、このような家は数百年も維持されています。
多少手間がかかっても、20~30年で建替えられてしまうコロニアル屋根の家は、十倍も長持ちする、機械に頼らなくても(健康を害さずに)快適に過せる自然住宅より私にはどうしてもいいとは思えないのですが、いかがでしょうか。
先人の知恵は計り知れないものがあるようです。
せっかくのいいものが今までにもあるのですから、利用しない手はないのではないでしょうか。
もちろん全てをそのまま現代の住宅に利用できるわけではありませんし、その他にも難しいところは山ほどあります。
でもやはり、なんとかしたいと思う気持ちもまた山ほどあります。
後者の山は前者よりもはるかに高いような気がするのですが…。
(2006年8月5日のメルマガより)