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大工がいなくなる!原因と対策!!
私たち家を建てたり、リフォームする請負側の問題なのですが、住宅建設の担い手である大工が減っています。2022年末公表の国勢調査によると過去20年で半減しました。賃金などの待遇改善が遅々として進まず、若い世代が減り、高齢化が一段と進んでいます。新築現場では不具合の増加(技能の低下)が指摘され始めています。大工職人の技能が著しく低下していることの現れに違いありません。これは、あなた方ユーザー様の問題でもあると思い、お伝えさせていただくことにしました。
40年前と比較すると3分の1に
国勢調査によると、大工の人数は2020年時点で30万人。40年前(1980年)と比べると3分の1の水準です。
建設土木作業員も人数は減っていますが、減り方はピーク期の300万人から200万人弱へと3分の2の減少で、大工の人数の落ち込みは著しいのです。
また、ほかの業種より高齢化も際立ちます。
2020年時点で大工の60%が50歳以上、うち30%は65歳以上なのです。
いっぽう30歳未満は7%にとどまり、このままなら2035年前後に15万人となり、2040年代には10万人を切る水準まで減ります。
若い人材が増えない一因は、待遇改善が進んでいないことです。
建設職人を中心に構成する全建総連の調査では、大工の年収は最新の2021年で全体平均で416万円、雇用される労働者は約364万円、一人親方と呼ばれる個人事業主は約424万円にとどまります。
電気工や鉄筋工など、ほかの分野を含む平均年収を下回っています。
建設業全体では過去10年で待遇改善は進みましたが、小規模事業者が多い大工はこの流れに取り残されたと言えます。
賃金だけでなく、社会保険への加入が徹底していないほか、長時間労働などもなお目立ちます。
大工の減少は何をもたらすのでしょうか?
住宅は経済波及効果が大きいだけに警戒感は強く、野村総合研究所の大道亮氏は「今後は人口減を背景に住宅新築は漸減が見込まれるが、予測される大工の減少はこれよりさらに早いペースで進む。人手不足で住宅の供給に制約が生じると、日本経済全体にもマイナスの影響が及びかねない」と話します。
新築現場で不具合の発生率が上昇
すでに住宅新築の現場では異変が起きています。
不動産コンサルタントのさくら事務所(東京・渋谷)が建築主からの依頼で第三者として新築現場を調べたところ、不具合の発生率が、ここ数年で上昇していました。
特に断熱材の設置や耐震性に関わる構造部などの不具合は2022年に過去最大となりました。
同社の報告では大工だけでなく、ミスのチェックを担う現場監督らも不足して現場の疲弊が不具合の増加を招いているそうです。
さらに同社では「新築だけでなく、既存の住宅の修繕で大工の不足の影響が深刻になる可能性もある」と予測しています。
新築は木材を工場で事前に加工するなど人手不足へ対応する技術開発が進んでいますが、「劣化度合いや作業環境がそれぞれ異なる既存住宅の修繕は、大工らの技術や経験に依存する部分が大きい」と懸念します。
既存住宅修繕の需要は今後、拡大が見込まれています。
居住世帯がある住宅5360万戸のうち、700万戸は耐震性不足で、新耐震基準でも3450万戸は省エネルギー基準を満たしません。
さらに850万戸の空き家もあり、改修しなければ再び居住したり売却したりするのが難しい物件も多いのです。
こうした作業の担い手不足の影響は軽視できません。
「多能工化」に国も支援を
野村総研の大道氏は「打開するには大工のリスキリング(新しいスキルを学ぶこと)がカギになる」と話します。
これまでより幅広い技術を持つ「多能工化」を進めていくという案です。
例えば、新築と修繕の工事を柔軟に行き来できる多様な技術をもつ大工が増えれば「収入や待遇は安定し、若い人材が増えることも期待できる。学び直しは個人に任せるのではなく、建設会社などが育成プログラムを用意し、国も支援する体制が望ましい」と提案します。
大工の人手不足~新規雇用が停滞している原因
全国で大工の新規雇用が減り、高齢の技術者が引退していきます。
しかし、今後も建設事業を続けていくためには人手不足の問題を解決しなければなりません。
そこで、大工の人手不足の対処法を考えてみます。
総務省の国勢調査をもとにしたデータによると、2020年に9万人の大工がいなくなり、建設業界は人手不足が進みました。
2022年もこの大工不足はまだ改善されておらず、大工の数が減り若い雇用が確保できない状況です。
熟練の技術を持った大工が減り、身体の事情で引退する人が増えています。大工の高齢化と雇用確保の困難さは、建設業界では避けられない議論です。大工の人手不足の原因は主に以下の5つです。
1.若い大工志望者の減少
大工の人手不足の一番の原因は、若い大工志望者の減少です。
職人の仕事は3K(汚い・きつい・危険)なイメージがあり、就職したい若者が減っています。
そのため大工を志す若者が減り、新規雇用が難しいのです。
2.熟練大工の引退
熟練技術を持った大工が高齢化し、年齢を理由に引退していくことも人手不足の原因です。
通常は世代交代の際は若手に引き継ぎしますが、若手がいないため技術継承者がいません。
ベテラン大工の減少にともなって、ノウハウも失われています。
3.大工の賃金
大工の賃金は、日本の平均年収と比較して低い傾向にあり、仕事としての魅力が低いのです。
現役の大工の方でも収入を上げたいとほかの企業や職種へ転職する人もいます。
4.大工の労働条件の悪さ
大工の作業の提示は朝8時から17時までですが、残業して片付けをしてその後事務所へ戻って事務作業することもあります。そのため長時間労働になりやすいのです。
現場によっては夜勤が入ったり、週休2日が保証されていないこともあります。
労働条件的に良いとはいえないため、理想の仕事として選ばれづらいようです。
5.ベテラン大工のノウハウの継承問題
大工の技術を承継する困難さも、建設業界では大きな問題になっています。
建設業界では「背中を見て覚える」のが通例化しており、明確なノウハウのマニュアル整備が進んでいません。
作業現場でベテランに質問する機会もなく、判断基準を学ぶ機会が少ないです。
そのためベテラン大工のノウハウや技術が継承されず、技術力不足になり若手が育ちません。
大工の人手不足を解消する具体的な方法
次に、大工の人手不足を解消する具体的な方法について考えてみましょう。
1.労働環境の改善
大工の人手不足を解消するために、労働環境の改善が必要です。
労働環境の整備は大手ゼネコンを筆頭に進んでいますが、まだ中小規模の工務店では確立されていません。
例えば建設DX(※)を推進し、作業ロボットを導入して重作業を機械がおこなうようになれば、高齢の大工も軽作業や判断面で働いてくれる可能性があります。
また、きついというイメージを改善できるため、大工になりたい若者が増える可能性もあるでしょう。
(※)DX(デジタルトランスフォーメーション)とはデジタル化による業務の改革(やり方の変革)のことで、よく使われる「IT化」とは業務の効率化(簡素化)のことで、目的が異なります。
2.作業フローの効率化
現場の作業フローを効率化し、省人化を図る必要があります。
現時点では現場作業は「人がおこなわなければならない」現状がありますが、作業ロボットや建設DXの導入などにより、現場に行かなくても作業可能になるでしょう。
3 .福利厚生の改善
若者の雇用を促進するために、福利厚生の改善にも着手しましょう。
就職の際に給与面だけでなく、福利厚生面は重視されます。休日保証や有給の取りやすさ、退職金などを整えて若者が入社したいと思う企業体制を整えるべきでしょう。
しかし福利厚生の保証には経費がかかります。
その経費を捻出するためには作業の効率化や生産管理を進めてコストを抑え、浮いた経費を福利厚生面に使用する必要があるでしょう。
4.若手へのノウハウ共有
若手へのベテラン技術のノウハウ承継に、建設DXが有効です。
ウェアラブルカメラを導入し、ベテラン作業員の視点で作業を見せて若手大工に技術を承継させられます。また、3Dモデルとウェアラブルカメラを組み合わせて録画し、ベテランの作業時の判断を若手大工に視覚的に見せて履修させる方法も開発されました。
建設DXで実現したベテラン技術の承継を取り入れ、若手の技術者を育てるべきです。
5.給与の見直し
大工の給与は安い、というイメージを払拭するために賃金の見直しも必要です。
もちろん給与額を増やすことは容易ではありませんが、現実的に400万円以上の年収は見込めないという現状が大工という職業への魅力を損なっています。
効率化をおこなってコストカットし、無駄な人件費や経費を省いて作業員への給与を高める努力は必要です。
6 .女性の雇用の促進
日本政府も建設業界の人で不足を懸念しており、女性の雇用促進に取り組んでいます。
国土交通省が発表した「産業行動計画」においても、女性が働き続けられる職場を目指す取り組みがおこなわれています。
女性が働きやすい仕組みづくりに欠かせない産休・育児休暇、フレックス制の導入も必要でしょう。
また、男性と比べて非力な女性でも作業ができる作業ロボの導入で、女性の大工志望者が増える可能性もあります。
大工の人手不足の改善策~建設DXの具体例
最後に建設DXの代表的な技術をご紹介します。
クラウド
クラウドは、インターネット環境さえあればどこでも利用可能です。距離に関わらずリアルタイムに工事情報の共有が行えます。施工写真や図面の管理、工程表や日報などの施工管理業務をスマホやパソコンで一元管理できる『施工管理アプリ』などもクラウドの一つになります。
ICT(情報通信技術)
ICTとは、Information and Communication Technologyの略で、人とインターネットを繋ぐことで、人と人を繋ぐ技術のことです。リモートグラスを用いたリアルタイムなコミュニケーションを行い、若手技術者支援の体制を整えることが可能です。AR技術を使った設計図の現場共有や、ドローンによる3次元モデルの生成なども行っています。
IoT(モノのインターネット)
IoTとはInternet of Thingsの略であらゆるモノがインターネットに繋がりデータの取得を実現する技術です。現場にある様々なモノがインターネットに接続されることで、位置情報や気候の状態、作業員の体調まで把握できるため、建設現場の生産性向上が期待できます。
AI(人工知能)
AIの活用によって人手不足を解決していく企業も増えてきました。単純作業の自動化を実現できることや、安全性の向上も期待できるため、建機の自立走行や画像認識技術を活かした判定システムなどの導入が行われています。