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AI先進の米国で「就職するなら職人!」

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現場で技量を発揮する職人こそAI時代の勝者

10年以上以前のことになりますが、ある人から『これからは植木職人が絶対いいよ。植木の技量を身に付ければ、
喰いっぱぐれないから』と言われたことがありました。正にこれからというのは現在のことだったのだなと思っています。

そこで、職がAIに奪われる現実が懸念される現在、AI先進国の米国の事情をお伝えしたいと思います。

大工、配管工など

米国の就職戦線に異変が起きています。
全米で学生情報を集約する専門機関(NSCH)によると、今年の春は配管工や大工などの技術を習得する職業訓練校への入学者数が昨年から12%増えました。

数年前から強まったこの傾向の背景には、AIで変わる将来への不安があります。
調査会社が10~20代のZ世代の親を対象に実施した今年の調査では「大学の学位があれば長期的な雇用安定が保証される」と答えた割合が16%にとどまり、77%が「自動化されにくい仕事」を選ぶことが重要と指摘したそうです。

AIの普及がホワイトカラーの職を奪うが、熟練工は引っ張りだこ

フォード・モーターのジム・ファーリー最高経営責任者(CEO)は6月、「AIによってホワイトカラー職の雇用が半減する」と予想しました。
いっぽう、熟練工を確保する重要性を訴え、若者の職業訓練校へのシフトを歓迎しました。

こうした動きにはもっともな理由があります。
米国の失業率は全体でみれば4%台前半で安定していますが、大卒前後の「20~24歳」に限ると昨年12月の7.5%から今年8月には9.2%まで上昇しました。

苦労しているのは高卒などの層ではなく、いつもは景気変動の影響を受けにくい大卒であることに特徴があります。

米スタンフォード大学デジタル経済研究所の教授らは8月の論文で、「AIの台頭によりソフトウエア開発の分野で22~25歳の雇用が2022年後半のピーク時から2025年7月までに約20%%減った」との試算を示しました。

 

米国年齢別失業率

 

顧客の問い合わせやクレームに応じる各企業や役所のカスタマーサービスでもAI(人工知能による応答)の活用が進み、雇用の縮小が進んでいます。

 

セントルイス連銀のエコノミストらも8月に「AIによる雇用喪失の初期段階を目撃している可能性がある」と発表し、AIと失業増の関連を認めました。

 

 

Googleデータセンター

雇用は失われているが、米経済全体は堅調で、その理由の一つが、活況に沸く「データセンター」への投資です。

「データセンター」とは、AIを支えるインターネット用のサーバやデータ通信などの装置を設置運用することに特化した建物の総称を指します。
(画像はGoogleのデータセンター、千葉県印西市)

マッキンゼーは4月、世界の「データセンター」への投資が
2030年までに5.2兆ドル(790兆円)になると予想しましたが、8月には7兆ドル(1060兆円)に修正しました。

 

 

空前の規模の投資は、ひずみも生みます。

マッキンゼーは、「クラウディングアウト(投資が建設業や発電業に偏り、製造業や都市インフラなど他業種が後回しになること)」が起きると懸念します。

全米製造業者協会によると、製造業の労働力不足は2033年までに190万人にのぼります。
同協会は「経済と国家安全保障上の問題になる」と警鐘を鳴らしています。

 

AI支える「データセンター」急増で電気代が2倍に

データセンター消費電力量

米国では2000年代半ばから2020年ごろまで電力需要は横ばいでした。
米エネルギー情報局(EIA)によると、ここ数年は需要が増加に転じて2025年は過去最高だった前年の需要をさらに更新すると予測されます。
消費電力の増加の多くは「データセンター」によるものだと指摘されています。

需要の増加は電気料金に跳ね返ります。
EIAによると、7月までの電気料金を比べると25年は前年比で5%の値上げとなりました。
値上げ幅は一律ではなく、米ブルームバーグ通信の調査では「データセンター」に近いほど電気料金は上昇する傾向があります。
「データセンター」が集積する地域では過去5年で倍以上に値上がりしたところもあります。

米天然資源保護協会(NRDC)は世界最大の「データセンター」集積地の米バージニア州を抱える米北東部で電力不足が起こると予測しています。
「データセンター」が利用可能な電力供給を上回るためで、2028年までに一般家庭の電気料金は月に70ドル(1万500円)増えるといいます。

発電所

 

「データセンター」は約2年で建設できますが、発電所の新設には5~10年は必要です。

この需給ギャップを埋めるために閉まるはずだった石炭火力発電所が米国の各地で延命、ふる稼働しています。

石炭火力は二酸化炭素(CO2)排出量が多く、脱炭素の流れに逆行します。

 

AIがもたらす変化は急で暴走も怖いが、ブレーキをかけられない事情

AI行動計画

トランプ米大統領は7月に国家戦略「AIアクションプラン(AI行動計画)」を発表しました。
安全面を重視していたバイデン前米政権に対し、スピードを重視して技術開発を推し進めています。
背景にあるのが、産学官民が一体で力をつける中国への警戒です。
米国は世界のAI開発を先導してきました。
しかし、スタンフォード大のAI年次調査は「中国発のモデルが米国に追いつきつつある」と指摘します。
2月時点で米中のトップAIモデルの差は、1.7%にまで縮んでいます。

トランプ氏は、規制緩和で米国内の技術革新とインフラ整備を促していく方針です。
例えば、著作権で保護されたコンテンツをAI企業がAIの学習に使うことについて、著作権侵害を巡る訴訟が全米で50件ほど進んでいます。
しかしトランプ氏は、「中国との競争を考えると、全てに使用料を払うことは現実的ではない」と開発優先の立場を隠しません。

人類抹殺計画プログラム

 

AIの権威、カナダのモントリオール大のヨシュア・ベンジオ教授は「国家間の熾烈な競争は、優位を保つためにAIの安全性を犠牲にする危険な動機を生み出しかねない」と指摘します。
「こうした状況はサイバー攻撃や人間がAIを制御できなくなる可能性など、公共の安全と国家安全保障上のリスクをもたらし、勝者なしの結末を迎える」と警告しています。
映画「ターミネーター」が描いたAIによる人類の抹殺プログラムを起動することになりかねません。

 

AIに仕事を奪われる大学出の「エリート」たち

AIの普及で米国のホワイトカラーが打撃を受けている一方で、職業訓練校の入学者は急増しています。
これは笑えない話で、日本も確実に同じ道を辿るはずです。
「良い大学→大企業」が最もリスクの高い選択になったわけです。
米国の職業訓練校入学者は2021年から2025年にかけて急増、特に20代前半の層が顕著に増えています。
同時期の4年制大学は入学率が頭打ちです。

代替されやすい職、代替され難い職

配管工の平均年収

 

若者たちは気づいています。
「4年間で600万円使って学んだスキルが、卒業する頃にはChatGPTで代替されている」というリスクに。
法務アシスタント、マーケティング資料作成、データ分析とレポート、…すべてAIが片づけてくれます。

東京都内の配管工、腕が良ければ年収800万から
1,000万円です。
電気工事士、独立すれば1,200万も珍しくありません。
しかも、仕事はAIに奪われず、年齢を重ねるほど職人としての価値が上がり、独立のハードルも低い。
どう考えても、こっちの方が「勝ち組」ですね。

大工職人の高齢化推移

 

 

しかし日本の親は…
「せめて大学だけは出ておきなさい」。

その結果、建設業就業者は2000年の685万人から2023年には485万人へ30%も減少しました。
業界平均年齢は47.5歳で深刻な人手不足、工事が回りません。

需要は爆発的にあるのに誰もやらない…これほど美味しい市場が他にあるでしょうか?

 

「学歴」より「希少性」が価値を生む時代

 

これからの10年で起きるのは、価値の逆転です。
「高学歴エリート」とされる人材は供給過多のうえAIで代替可能、年齢と共に『お荷物』化のリスクがあります。
いっぽう「ブルーカラー」とされている人材は供給不足でAIで代替不可能、年齢と共に価値が上昇。

学歴より手に職米国の若者は、既にこの現実を見抜き、職業訓練校に殺到しています。
では日本の若者は?日本企業は? まだ気づいていないようです。
「大学→大企業が正解」という幻想にしがみついています。

しかし勝ち組企業は、もう動いているようです。
ある建設会社の社長によれば初任給32万円、週休3日制、資格取得は会社が全額負担、30歳で主任になれば年収600万円を確約。

 

AI時代の勝者「応募が殺到しています。しかも、めちゃくちゃ優秀な子が来る」。
大手企業の初任給25万、週休2日で残業まみれ…待遇で負け、成長機会で負け、安定性でも負けています。
それでも「うちは一流企業だから」と胡座をかいている会社は、10年後に存在していないかもしれません。

若い人が「安定したキャリア」を求めるなら、AIに奪われないスキルを身につける時代がそこまで来ています。
それは、配管かもしれないし、電気工事かもしれないし、大工かもしれません。

企業も「ホワイトカラー至上主義」を捨てて、技術職や現場職の待遇を今すぐ改善すべきです。
既に工事が受注できても人がいなくて断る企業、物流が回らず配送遅延が常態化、こういう事例が日本中で起きています。
人材がいなければ、どんなビジネスモデルも絵に描いた餅。
ブルーカラーこそ、AI時代の勝者になるのです。

by株式会社 大東建設 阿部正昭

 

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