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吹き抜け 上下の場を心で繋ぐ [快適さを生む「繋ぐ」2]
今回も独断と偏見で旧暦のお話から入らせていただきます。
立秋(りっしゅう)初候 涼風至る(りょうふういたる)」
線香花火の一生
線香花火は日本独自の手持ち花火です。江戸時代の寛文年間(1661~1673年)以降、女性や子どもも遊べる安全な花火として生まれ、親しまれるようなりました。
線香花火の魅力は、なんといっても変化していく火花の様子でしょうね。じつは点火してから燃え尽きるまでの段階に、それぞれ名前がついています。
火をともしたあとできあがる火の玉から短い火花が出はじめるまでが「牡丹(ぼたん)」。
勢いよく火花が四散するころが「松葉」次第に火花が弱まり火の玉が大きくなる「柳」。
最後の力を振り絞るように一瞬だけ光と火花が強まる「散り菊」です。
少々値は張りますが、抒情的(じょじょうてき)な線香花火の一生をたのしむには、職人による手づくりの品がてきしています。
美しく、繊細な火花が長持ちしますよ。
吹き抜け 上下の場を心で繋ぐ [快適さを生む「繋ぐ」2]
室内において人間が感じる暑い、寒いといった状態を「温熱環境」といいます。温熱環境の理想といえば、暑くも寒くもない…夏涼しく冬暖かい状態です。
部屋による温度差や1階と2階の温度差もなく、快適に感じて過ごせる状態です。
とはいえ、日本では、そのような家は滅多にお目にかかれませんけどね。
ただし、そのような理想的な家もお金をかければ、できるようになりました。断熱・遮熱・気密・換気をよくご存知の建築会社などにまかせないとそれも定かではありませんが…。
吹き抜けは、温熱環境を考えたときに1階と2階をつないで温度差を解消する大切な構造アイテムです。夏は1階の窓から取り込んだ涼しい風を2階へ運びます。
そして、冬は1階で温められた空気を2階へと運びます。ひと昔前は、エアコンや石油、ガスファンヒーターなどの、温ためられた空気はどんどん上に行ってしまい、足下がスースーして寒くなってしまいます。
暖房効率が悪いということで、1階と2階がつながる間取りは避けられがちでした。
ですが、床暖房や薪ストーブを設置するときには、輻射熱で家全体を暖められるので効果的です。また、それ以外にも吹き抜けには家族同士の音や気配をそれとなく感じさせるとういう効果もあります。
吹き抜けを通して家全体を家族の大きなひとつの部屋として捉えられたら家としての価値が何倍には上がるような気がしませんか。
【吹き抜けの効果と効能】
①[何といっても開放感抜群]
ほかのフロアに比べて天井の高さが2倍かそれ以上あるので目線が抜けて、実際よりも広々と感じられます。理由があります、家の広さを感覚的に広いと感じられるのには、目線の長さがどれだけあるかなのです。
これは[吹き抜け効果または大広間効果]といって…
どんなに家全体は広くても狭い部屋ばかりで、長い目線の距離が取れない家は実際よりも全然狭く感じてしまうのです。逆に小さな家でも目線の距離が長く取れる家は実際よりも断然広く感じられるのです。
②【ハイサイドライトなどで明るい[空間]】
2階の高窓で取り入れた光を1階まで届けられるので、明るい【空間]が誕生します。また、それ以上に1階から2階まで壁一面の大きな窓にすれば、光のシャワーを浴びられる空間ができ上がります。
ただし、その大きな窓…高性能な断熱窓にしておかないと大変な灼熱地獄が訪れるかもしれません。熱も冷えも大半は窓からの侵入です。中途半端に壁一面の窓をつくってしまうと灼熱地獄も味わえますが、冬の結露のシャワーでさえも味わうことになるかもしれません。
③【気配を伝える】
1階と2階に家族が離れていてもやんわりと「気配」という空気で繋がることができます。親も子どもも、お互いに安心感があります。
私のところで建築させていただいたお宅では、マンションにお住まいのときは、同じフロアーにも拘らず、お子さんたちが、絶対に自分の部屋では寝たがらなかったのに、この吹き抜けで上下階が繋がっている新居では、子どもたちに不安感がなくなり、進んで自分たちの部屋で寝てくれるようになったとお話してくれました。
その上、遊んでいるときも子どもたちは寂しさを感じることなく、親と離れても遊べるようになったといっていました。
そこには、吹き抜け空間でしか味わえない「気配」という空気で満ちているのです。
【1階と2階の温度差のない空間】
吹き抜けが1階と2階の空気を伝えるシャフトというか、煙突というかになって、家全体を一定の室温に保ってくれます。夏はハイサイドライトから熱気を逃し、冬は床暖房なら2階まで暖かさが伝わります。
ただし、先ほどもいいましたが、同じ床暖でも蓄熱式の熱容量の大きな床暖でなければそこまで暖めてはくれません。石油やガスファンヒーターでガンガン炊いてしまっても断熱がしっかりしていなければ、窓から滝のように結露水が流れ落ちるという状態はまぬがれません。
以前、「お宅拝見」というテレビ番組で紹介されたという建築家が手掛けたお宅に呼ばれて行ってみたのですが、断熱をまったく考えられていない大断面の窓が、ビッチョリと濡れていて、まるで滝のように終始結露した水が流れ落ちていました。
そのお宅に呼ばれた理由は、半地下の部屋にナメクジが発生して困っているのでなんとかしてほしい。とのことでした。当然窓ガラスの水は壁の中でも結露水の滝は発生しています。
その結露水が半地下の壁に伝わっているのは一目瞭然でした。結露水のシャワーは、ある意味夏の灼熱地獄とどちらが恐ろしいか、私にはなんと応えていいか分かりませんでした。