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正月のお餅の危険を回避する７つの方法
正月のお餅で高齢の親や幼児を窒息させない7つの方法
正月になると「高齢者が正月の食事で餅を喉に詰まらせ窒息」という事故が必ずニュースになります。
窒息は、お餅以外の普通の食品でも起こりますし、高齢者だけでなく幼児や成人にも多い事故です。
目の前でそんな事故が起きたら、どうすればいいでしょうか？
簡易な吸引器具を購入して備えたり、背部叩打法や腹部突上法といった専門的な「窒息救命」テクニックを身に着けておきましょう。
呼吸が止まってから何分もつのか？
食物が喉に詰まって呼吸が止まってから、４～６分で酸素不足のため脳が破壊されはじめます。
脳細胞は一度破壊されてしまうと、どのような治療を施しても二度と再生しません。
そして頼みの綱である救急車は、通報から到着までの全国平均時間は９分です。
つまり、家族の呼吸が止まっている場合、その場にいるあなたによる応急手当が絶対に必要なのです。
完璧ではないが時間を稼げる「窒息吸引機」を用意しておこう
救命テクニックを解説する前に、高齢者や幼児のいる家庭ならまずは購入しておきたいアイテムを紹介します。
「窒息吸引器」は、気道に詰まった液体や異物を迅速に除去することで呼吸困難の原因を取り除く器具です。
Amazonなど通販サイトで数千円から購入できますから、じっくり情報を集めて安心できる器具を選びましょう。
子供用と大人用のマスクが付属している製品が多く、家族全員の安全を確保できます。
一人暮らしの人でも自分自身で吸引できる設計のものもあります。
しかし、多くの製品は医療専門家向けではなく、緊急時の応急処置（最低限の気道の確保など）を目的としています。
本当に役立つかどうかは自己責任ですが、高齢者のいる家庭では保険として１本買っておくのも悪くないでしょう。
しかし、アテにはしないほうが無難、という程度の器具です。
交通事故死を上回る窒息死
日本における食べ物が原因の窒息死は、交通事故死を上回る年間４，０００人以上と推定されています。
高齢者の窒息死が特に多く、餅が原因となる事故は正月を中心に多発し、１月だけで４０％が発生します。
また子どもでは、丸くつるつるとした食べ物（ミニトマト、ブドウ、キャンディーなど）が原因の窒息事故が、年間
１，０００人、特に５歳未満の乳幼児で多く発生し、そのうち９割は５歳未満です。
食事の際の窒息といえば高齢者のイメージが強いですが、１～１４歳の日本人の死因トップは不慮の事故であり、そのうちトップ３は「窒息」「交通事故」「溺水」です。
お正月の家族そろっての宴席では子供向けではない料理も並びますし、親の目の届かないところで口にする可能性も高いので、注意が必要です。また２０１９年４月、「女性ユーチューバーが赤飯おにぎり早食いを生配信中に倒れて死亡する」という事件がありました。女性は４０代で、窒息死のリスクは全世代に共通点するといっていいでしょう。
食事を喉に詰まらせて親や子を死なせない７つの方法
一般人でも可能な応急処置について、日本医師会のウェブサイトなどを参考にしてまとめてみました。
１：咳をさせる
食事中に急に喉を抑えて苦しがる人を見かけた時、意識があるようならば「咳をして！」と声をかけてみましょう。強制的に咳をすることでポロッと異物が取れることがあります。
突然の窒息で気が動転している人でも、この声かけで冷静に対応できる可能性が高いのです。
２：背部叩打（こうだ）法
「１」と同時に、気道の異物除去法として最もポピュラーなのが「背部叩打（こうだ）法」です。
うつむき加減にした患者の背中を、布団叩きのような勢いでバンバンと叩きます。
青アザが残りかねないぐらい叩くほうが、異物がポロッと取れやすいです。
背中をトントン叩く程度では効果がありません。
また、できるだけ頭の位置を下げた状態で実施することが重要なポイントです。
頭を起こした状態では、逆に叩いた振動で食べ物がどんどん喉の奥に移動し逆効果となることも危惧されます。
ちょっと喉に引っかかった、と言うのと窒息とは訳が違います。注意が必要です。
３：腹部突き上げ法（ハイムリッヒ法）
「２」でも窒息が解除されない場合は、「腹部突き上げ法（ハイムリッヒ法）」です。
背中側に立って、ウエストあたりで両手を廻し、利き手をグーにして拳の親指側をへその上（みぞおち）にスライドさせることで、下からの圧力で異物がポンと取れるように操作します。
ぐったりした大人を抱える操作は非常に力がいるので、力のありそうな男性に任せましょう。
複数人で交代したほうがいいです。
そして、この「３」以上のケースでは、急いで１１９番通報したほうが無難です。
４：「ファイブ アンド ファイブ」
「３」でもダメだった場合、「２」に戻って５回→「３」を５回…と、背部叩打法と腹部突き上げ法を繰り返す方法を、「５アンド５」と呼びます。
ヨーロッパ蘇生評議会などが推奨しています。
５：掃除機で吸引はアリ？
「餅で窒息したら掃除機で吸引すればよい」という人もいますが、医師会は推奨していません。「掃除機の不衛生問題」「吸引圧で肺細胞に損傷を与える危険」といったリスクがあるからです。
ただし、窒息物が取れずにドンドン顔色が悪くなる中、「１」～「４」の効果がなく、救急車が到着していない状況であれば、試す価値はあるかもしれません。
具体的な方法は、この後で詳しく紹介します。
６：直接取る
しゃぶしゃぶ肉などは喉を覗いてトングや箸などで引っ張り出すと、あっさり取れることがあります。
仰向けに寝かせて高めの枕を入れると喉の奥が見えやすいです。
奥へ押し込んでしまわないように注意してください。
このときに、指を噛まれてしまうことがあるので、指に布を巻いたり、割り箸を利用するなどの工夫が必要です。
７：心臓マッサージ（胸骨圧迫法）
「１」～「６」を試しても窒息が解除されずに顔色は悪く、意識も遠のいてきた場合は心臓マッサージが必要です。
胸骨（両乳首の中間あたり）を１分間に１００～１２０回、力いっぱい圧迫します。
マッサージで肋骨が折れることもありますが、窒息死よりはマシなので思い切って体重を載せて圧迫しましょう。
５分もやればグッタリくるので、複数名での交代が望ましいです。
胸骨を圧迫すれば肺も動くので、心臓マッサージ単独でも多少の酸素取り込みが期待できます。
心臓マッサージに余裕があれば、「心臓マッサージ３０回→人口呼吸２回→心臓マッサージ…」と、心臓３０回ごとに人口呼吸を２回挟む方法が、一般的には推奨されています。
しかし「マウス・トゥ・マウス」の人口呼吸に自信がなければ、救急車の到着まで心臓マッサージを続ければ、一般人の応急処置としては合格です。
餅で窒息しかけた時に掃除機は有効？
掃除機の先端部に差し込む「吸引フラットノズル」を購入しておきます。（ Amazonで２，０００円程度）
吸引圧が低い場合には、ノズルの吸引口をガムテープなどで一部ふさぐことで吸引口の面積を小さくすれば、吸引圧を上げることができます。
そして、舌や粘膜を吸い込まないよう、「ノズルを喉の奥に挿入してからスイッチを押す」のがコツです。
ただし、この応急処置の目標は呼吸であって異物除去ではありません。
異物除去に熱中して無呼吸状態が５分以上続くことは本末転倒です。
掃除機による吸引を試しても手におえそうにない場合には、深追いせず１～２分で中止すべきです。
窒息事故を予防する
食事中の窒息事故を防ぐには、食べ物を小さく切って、ゆっくりよく噛んで食べることが重要です。
幼児の場合は、食事中に遊んだり、歩き回ったりしないように注意し、水分を摂りながら落ち着いた環境で食事をさせる必要があります。
ミニトマトやぶどうなど、丸くてつるっとしたものは特に注意し、４等分にカットしましょう。
そして万一の時は、慌てず救命措置を行いましょう。
