BLOG
ブログ
【日本の家を改善しなければ、入浴死1万9千人/年は止められません。】
【日本の家を改善しなければ、入浴死1万9千人/年は止められません。】
[世界でいちばん危険な家からの脱却は、断熱リフォームに掛かってます。]
消費者庁の最新調査では、入浴中のアクシデントで命を落とす人の数は年間1万9千人と推計されています。とりわけ入浴中に溺れて死亡する高齢者(65歳以上)は日本全国で年5千人を超えています。
家が寒くて体の芯まで冷え切り、熱い浴槽に身を沈め「ふう~極楽、極楽」。その一言を最後に、あなたの大切な人??があの世へと旅立つことになるかもしれないのです……は、そこまではとお考えになられる方は非常に多いのですが、大袈裟でもなんでもありません。
図は、WHOが調査したさまざまな死因統計のうち、75歳以上の人がお風呂などで溺死した人(人口10万人あたり)の比較、日本はダントツで世界ワースト1となっています。
ドイツの方が圧倒的に寒いのに、日本の方が40~50倍になっています。
これは、明らかに住宅の温熱環境の違いによるもので、日本の家の断熱および暖房システムが劣悪であることの結果です。
全館暖房が当たり前の海外の家づくりに対して、わが国では部分&間欠暖房というのが一般です。「我慢の省エネ」を押しつけていた私たち住宅建築従事者の責任は重大だと思います。
【実はヒートショックじゃない~冷えた体に高温・長湯で「浴室熱中症」に】
これまで、入浴中の事故原因の筆頭にあげられてきたのは「ヒートショック」でした。ヒートショックとは、血圧が大きく変動することで体に不調をきたす症状のことで、暖かい部屋から温度の低い浴室へ移動するなど、急激な温度変化によって引き起こされます。
そのため、長年、入浴中の事故はヒートショックによるものだと思われてきました。
ところが、2019年7月、千葉科学大学・黒木尚長(ひさなが)教授により、入浴中の事故の8割はヒートショックではなく、「浴室熱中症」が原因との調査結果が発表されました。
お湯の温度やお湯につかる時間にもよりますが、全身浴をすると体温が40度まで達するため、意識障害をともなう重度の「熱中症」に陥るリスクが高まってしまうそうです。
仮に体温が42.5度を超えると突然死することもあるのですが、高齢者は熱さを感じにくく、また長時間お風呂に入る傾向があることから、知らぬ間に熱中症になってしまうのだそうです。
浴室熱中症とは、浴槽の湯の熱によって体が過度に温められ、夏場に発症する熱中症と同じような症状を引き起こす状態のことです。熱い風呂に浸かっていると、体温が上昇します。
汗をかいて体温を外に逃がそうとしても、頭以外は湯船の中にあるため、放熱のしようがありません。若い人であれば体の表面に熱い血液を集めて熱を逃がすことができますが、高齢者は血液を循環させる力が低下しているため体内に熱い血液が滞留し、心臓に負担が掛かってしまうのです。
こうなると脳へ流れるはずだった血流が減少し、意識障害を引き起こして意識障害が進み、気を失って倒れこんでしまいます。これが心臓や血管に異常がなくても意識を失ってしまう理由なのです。
【高温・長湯で体温42.5度を超えると突然死リスクが】
黒木教授(写真)によれば、「体温37度の人が全身浴をした場合、湯温が41度だと33分、42度だと26分で体温が40℃に達します。この結果、入浴中であっても重度の熱中症の症状が出て、意識障害を生じるリスクが高まることが分かります。そのまま入浴を続け、体温が42.5度を超えれば突然死することもあり得ます」。
熱中症というと夏というイメージがありますが、入浴中に熱中症を起こすのは、冬場が圧倒的に多いそうです。「夏に比べて冬は、湯温を2℃ぐらい高くして長めに湯につかる人が多くなります。
特に70歳以上になると神経の老化によって熱さを感じにくくなり、長時間湯船につかる傾向が高くなります。すると、めまいや頭痛、倦怠(けんたい)感など熱中症の初期症状に気付かないまま、意識障害に陥ることもあります」。
【湯温41℃以下、入浴時間10分以内が安全の目安】
【熱中症の恐怖~脳や体の細胞が死滅していく】
ここで気になるのが、湯温と熱中症の関係です。
65歳以上の高齢者の風呂の温度は42度もしくは43度に設定されている場合がもっとも多いという結果が出ています。
ですが、取り立てて「熱いお湯」というイメージのない42度の湯温でも、浴室での事故は頻繁に起きています。42度のお湯に10分浸かるだけで体温が1度上昇し、体温が1~2度上昇するだけでも人体に異変は起きうるのです。
深部体温と熱中症の関係について、黒木教授は「人間の体温は40度以上になるとそもそも脳が耐えられず、意識障害を起こします。その後も体温が上昇し続け、42.5度を超えると次は細胞が死滅していく。こうなると死滅した細胞からカリウムが体内に流れ出し、高カリウム血症という状態に陥るのです。
高カリウム血症は心室細動を引き起こし、人間を死に至らしめます」「ただし、体温が37度から38度の間でも体内の水分量が不足している場合は意識障害を引き起こす可能性があります。意識を失ってしまえば溺死の原因となり、死亡のリスクは高まります」と解説しています。
医療機器メーカー・テルモの調査によると、日本人の平均体温は36.89度となっています。42度のお湯に10分入ると、日本人の体温は熱中症の初期症状である倦怠感や頭痛を覚え始める38度近くまで上昇するのです。
この時点で多くの高齢者は湯船から立ち上がろうと思っても、体に力が入らず湯船から脱出することが不可能となってしまいます。
この「10分」という時間を境にして、それを超えた途端に浴槽で命を落とす危険度が跳ね上がってしまうのです
。
程よい湯加減と思っていても、10分以上入っていると死のリスクがどんどん高まります。知らず知らずのうちに意識を失い、そのまま死んでしまう・・・これが「浴室熱中症」の怖さなのです。
【冷え切った体に熱いお風呂が「気持ちがいい」~これがもっとも危険!要注意です!!】
欧米のホテルでは浴室に浴槽がなくてシャワーだけの場合が普通にあり、日本人の旅行者を呆然とさせます。普通の家庭でも湯船にお湯をはって浸かるのは休日くらいで、普段はシャワーで済ますことが大半だそうなのです。
これは、全室24時間暖房が普通で家全体が温かいため「家にいて体が冷える」ということがないためです。いっぽう日本では家の中が寒く、寝る時間になる頃には体の芯まで冷え切ってしまい、「お風呂でじゅうぶんに温まって、すぐに布団に入って寝ましょう」という生活様式が普通に繰り返されています。
入浴の目的は清潔さの維持ではなく、十分ではない『暖房の補完』にあるのです。このため、冷えた体に熱いお湯が「気持ちいい!」という快感に感じられるのです。
浴室熱中症と診断された埼玉県在住の65歳男性の事例です。
「あの日は長引いていた風邪が治り、4日ぶりに温かい湯船に入ることができる日でした。体を思い切り温めてやろうと張り切って、湯温をいつもの40度から42度に上げて入浴したのです」
「お湯に浸かってしばらくすると、全身から力が抜けるような、ふわふわとした感覚がやってきました。それが気持ちよくて、ついつい湯船で目を閉じてしまいました」。
しかし、男性が次に目を覚ました時、彼は病院のベッドに寝かされていました。
男性の娘さんが長湯を心配になって見に行ったところ、浴槽のへりに仰向けでもたれかかるように湯に沈んでいたのです。
慌てて救急車を手配したおかげで男性は一命をとりとめましたが、医師からは「あと数分発見が遅れていたら溺死していた」と告げられました。
「先生からは体が温められすぎて熱中症と脱水を起こしていた、と言われました。また、入浴中に感じたふわふわとした心地よい感覚は、リラックスしたことによる眠気ではなく、熱中症による意識障害だとも言われたのです」(同・男性)
このように、高齢者はお湯により体が温められている心地よさと、熱中症の症状との区別がつかなくなってしまうのです。
【香川・兵庫・滋賀が入浴事故死亡者数ワースト3県】
浴室での死亡事故は年々増加傾向にあります。発生している県では香川、兵庫、滋賀がワースト3になり、ついで東京、和歌山という結果です。いっぽうで、寒いけれど全館暖房が普及している北海道や青森県は沖縄についで死者数が少ないという結果になっています。
グラフは、高齢者1万人あたりのCPA(入浴中心肺停止状態)の件数です。(東京都健康長寿医療センター:発表資料)
【救急車が来るまでにできることがあります(浴槽内溺水!)】
[保存版~できるだけ多くのかたに流布してください!]
誰もが浴槽内溺水の予備軍だと言えます。いざという時、助かるために自分でできること、そして家族にできることがあります。重要なことは救急車が来るまでの8分間(全国平均)、呼吸を確保することです。
呼吸確保のために自分自身や家族それぞれ役割分担があります。
【自分でできること】
[浴槽の浸かり方]
救急隊員によれば、要救助者は前のめりになって顔を湯面に浸けていたことが比較的多いことがわかっています。
和式浴槽の場合、壁面はほぼ垂直です。前かがみで入ることが多くなりますが、できるだけ浴槽の壁面に肩をつけるような形で座りましょう。
和洋折衷浴槽の場合、壁面は仰向けに寝そべるように斜面になっています。背中を壁面につけるようにして入浴します。
なお、湯量を調整して浅くすれば溺水の確率は低くなります。
[浴槽の縁を利用する]
入浴時に意識を失う不安のある人は、浴槽の縁を利用して沈み込みを防止します。
両腕を左右それぞれの縁にかけます。浴槽の幅が広くて両腕を同時にかけることができなければ、写真のように両腕を一方の浴槽の縁にかけて垂らしておきます。
写真のように逆側の浴槽壁面にお尻が当たっていればこの体勢で意識を失っても沈んでいくことはありません。
[緊急を家族に知らせる方法]
意識を失いそうだとか、自力で浴槽から出れない時、家族に緊急を知らせるにはモノが落ちる音や叩く音が効果的です。
最も効果的なのは、洗面器が床に落ちる音です。
浴室で急病を発症した経験があるのなら、いざという時に投げられうよう、湯に洗面器を浮かべておきましょう。
写真のような体勢にあれば、浴槽の壁面を洗面器などを使ってたたきます。
【家族にできること]
いつもより入浴が長いなと感じたら、声を掛けましょう。
返事ができない、意識がもうろうとしている、返事はできるけれど自力で浴槽から出られない場合、まず呼吸を確保をして119番通報して救急車を呼びます。
[あご先を持ち上げる方法]
傷病者を仰向けにできるようであれば、写真のようにしてあご先を持ち上げて呼吸をしやすくし、この状態で救急車の到着を待ちます。この方法では常に傷病者のあご先を持ち上げた状態にしなければならず、他の家族が119番通報できる場合に有効です。
[浴槽の縁にもたれかからせる方法]
自分しかいない場合には、傷病者を浴槽の縁にもたれかからせます。
まず自分に近い方の腕を浴槽の外にだします。次に自分から遠い方の傷病者の腕をつかみゆっくりと手前に引きます。そうすることで自然と傷病者の身体が回転します。次に傷病者の両腕を浴槽の縁の外に出します。
たいていはこの状態で湯の中に沈むことなく安定するので、浴室から離れて119番通報できます。
[浴槽の外に出す方法]
浴槽内で意識を失ったら、できるだけ早く浴槽の外に出すことが重要です。
特にすぐに心肺蘇生法を行いたい時にはなおさらです。
浴槽にお湯が張ってあれば、実は比較的簡単に傷病者を浴槽から出すことができます。
傷病者を見つけたら、傷病者の背中が手前に向くように体位を変換します。傷病者の脇の下に両腕を通して、傷病者のどちらかの前腕を握ります。「いち、に、さん」と掛け声をかけて傷病者を引きあげて、一度腰を浴槽の縁に下ろします。
そして静かに腰を浴室の床の上に下ろします。
この方法は浴槽のお湯を抜くとで、できなくなります。お湯を抜いたら引きあげは消防などのプロの救助者に任せます。