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日本の高齢者は、なぜ切れやすいのか? -歳を取ったら丸くなるために。

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日本の高齢者は切れやすいのか          最近よく話題になるのがキレる高齢者です。実は私も最近、いたる所で怒鳴り声を上げている高齢者を目にするようになりました。駅や病院などでの暴力・暴言・犯罪などが取りざたされ、高齢者に対する若い世代の反感の声が強まっています。

そういう私も高齢者の部類になるのかもしれませんので、他人ごとではないような気がしています。なぜ日本の高齢者は「不機嫌」なのでしょうか。そこに処方箋はあるのでしょうか。

【高齢者は本当に「キレやすい」?】

確かに身の回りでも、頑迷で不機嫌なお年寄りを見掛けることが多くなりました。

ある日は電車内で、やや足を伸ばして座っていた若い女性に対して途中から乗ってきた高齢の男性が「邪魔じゃねえか」とキレ、つかみかかるようにして声を荒げました。

別の日には、バスの中で子供が泣いているところを母親が必死であやしていたのですが、後ろに座っていた老夫婦が顔を見合わせ、「ああいうのは親が何とかすべきだよねえ」などと、これ見よがしに声を出します。

また、保育園の建設に「うるさくなる」と反対する、若い駅員を怒鳴りつける、店員にいちゃもんをつける…そんなイメージばかりが増幅し、高齢者害悪論がはびこります。どうしてこうも、日本の高齢者はキレやすいのでしょうか。

【欧米では「年を取ると穏やかになる」が定説】

欧米にもキレる高齢者はいますが、一般的に「年を取ると性格が穏やかになり、優しくなる」というのが定説です。

欧米では穏やかになるイギリスやアメリカで暮らした日本人によると、「お年寄りになればなるほど話し方がゆっくりになり、気は短くなるというより長くなる印象」があるそうです。ひと昔前までは、日本でもこちらのイメージのお年寄りが多かったように思います。

科学的に見ても、そういう傾向を実証するデータは多くあります。

2017年1月に英国ケンブリッジ大学の脳科学者たちは脳の分析調査を行い、「年を取るほど脳の前頭皮質が薄くなってしわになることなどから、気が長くなり、穏やかになる」と結論づけました。

調査を行った科学者によれば、「人間は年を取るほど神経質ではなくなり、感情をコントロールしやすくなる。同時に誠実さと協調性が増して責任感が高まり、より敵対的でなくなる」のだそうです。

これはまさに、日本の高齢者に対する評価とは真逆の評価と言えるでしょう。

人は年を取るほど幸せを感じるはずなのに

世界幸福度ランキング不満を抱える日本の高齢者…これは世界的な幸福度の調査からも垣間見えます。

そもそも、幸福度を測るランキング調査などにおいて、日本は先進国の中ではかなり低い順位に終わることが多く、たとえば国連の「World Happiness Report 2020」によれば、日本の幸福度は世界155カ国中62位なのです。

先進国の中では調査のたびにダントツの最下位を続け、その順位を下げ続けてています。

またOECDの調査によれば、日本では年を取るほど不幸だと感じる人が多いという結果が出ています。年を取るほど幸せを感じる人が増える…これは欧米などで顕著な傾向ですが、日本ではまさにその逆です。

年代別の幸福度を追った調査では、先進国においては幸せは若いころに高く、中年で低くなり、高齢になって再び上がるというまさにUカーブの傾向があります。

17~85歳までの2万3千人を対象にしたロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの調査では、最も幸せなのは23歳と69歳だったそうです。

 

いっぽう日本では、年を取るにつれ幸福度が下がっていきます。

「年を取れば幸福になる」という世界の傾向について、英国エコノミスト誌は、「年を取るほど争いごとが少なく、争いごとに対するより良い解決法を出せる。感情をコントロールすることができ、怒りっぽくなくなる。死が近づくと、長期的なゴールを気にしなくてよくなり、今を生きることが上手になる」、と分析しているのですが、なぜこうした現象が日本では起きないのでしょう。

高齢者を追い込み、キレさせる深刻な孤独感と満たされない承認欲求

日本の高齢男性は世界一「孤独」【日本の高齢男性は世界一「孤独」】

社会的孤立感は幸福度を最も大きく下げる原因であり、都市化・過疎化・核家族化・少子化などによって、その度合いは年々、加速しています。と同時に、人としての生きがいの重要な柱である「人に認められたい」という欲求が満たされる機会がほとんどなくなってしまっています。

「承認欲求」は人間の根源的な欲求のひとつです。

子育てや仕事で認められ、感謝され、必要とされていた自分がいつの間にか邪魔な存在になっている、と感じるとき、人は生きがいを失うのではないでしょうか。

【エグゼクティブは退職後、チャリティ活動へ】

ひるがえって、欧米などでは企業のトップや幹部は日本のエグゼクティブの10倍も100倍も稼ぎ、とっとと辞めてリタイアメントライフを送るのを楽しみにしています。世界に散らばるセカンドハウスを行き来したり、好きな趣味に没頭したり、講演活動をしたり。
こうしたエグゼクティブは退職後にチャリティ活動にいそしみます。

稼いだおカネをごっそりと寄付し、〇〇図書館、××ホール、などと名前を冠した施設を造ったり、慈善事業に寄付してありがたがられます。そこまで余裕がなくても、ボランティアなどの社会貢献をします。 欧米ではこうしたことで「承認欲求」「名誉欲」を満たしていくのですが、日本では、まだまだこうした話はあまり聞きません。

【満たされない承認欲求】

日本のキレる高齢者の怒りのマグマの源泉は、このような「満たされぬ承認欲求」にあるのかもしれません。キレる高齢者が増えていると言いますが、それは社会全体に高齢者が増えたからそう見えるという側面はあるでしょうし、単に年を取れば気が短く怒りっぽくなるからということで片づけられるものでもありません。

そうした意味で高齢者を疎外したり、単に批判したりしても何ら問題は解決しません。

誰もがいつか同じように、自らの成功体験をひけらかす頑固で怒りっぽい高齢者になるかもしれないのです。

高齢者の承認欲求という渇望を満たすためには、新たなコミュニティづくりのアイデアも必要でしょう。

また、世代間や高齢者同士のコミュニケーションが質量ともに絶対的に不足していますから、あいさつや何げない言葉がけや会話から、お互いをハッピーにするきっかけは生まれてくるはずです。

日本のオジサン(高齢男性)が「世界一孤独」な根本原因

人生とは出会いと別れを繰り返すものですが、年を経るにつれて新たな友達づくりが下手になっていく傾向があります。しかもその結果、日本の男性はどうやら世界でいちばん孤独らしいのです。

人々の精神や肉体をむしばむ「孤独」は、この国の最も深刻な病のひとつになっています。

【年を取ると友人をつくるのが難しくなる】

親しい友人はいても、学生時代のように濃密な時間を過ごす友達はなかなかいないものです。

そして人は年を取るごとに新しい友人をつくるのが難しくなり、また友人の数も減っていきます。

年代別Facebook友達登録これはさまざまなデータや研究でも実証されています。

米国フェイスブックユーザーの平均友人(知人)数のデータを見ると、18~24歳までの平均が649人なのに対し、25~34歳は360人、35~44歳は227人、45~54歳は220人、55~64歳は129人と、年長者になるほど少なくなっていきます。

(グラフは日本の調査結果ですが50代男性が飛びぬけて多いです)

ドイツの研究者などによって発表された論文によれば、友人のネットワークの輪は10代、20代を通じて広がり、20代の最後をピークに、その後は縮小トレンドに入っていくといいます。

この背景にあるのは、生活環境の変化です。

家庭や仕事、睡眠、運動、趣味など、20代を過ぎると日々忙しく、学生時代のような友人関係を維持することは難しくなります。

【30年前に提唱されたダンバーズナンバー】ソーシャルサークル

英国の人類学者ロビン・ダンバーは、動物の脳の大きさと社会関係性はリンクしており、脳が大きいほど付き合う個体数が多く、取り巻く社会グループが大きいと結論づけました。

そして、人間の脳のサイズによれば、150人が適正なソーシャルサークル(友人などとして関係を築く人の数)であると打ち出しました。

これが「ダンバーズナンバー(ダンバーズ数)」と言われるもので、安定した関係性を維持できるのは150人が上限であり、その中でも、最も強い関係性を結ぶ第0階層に5人、第1階層に10人、第2階層に35人、最後の第3階層に100人で、合わせて150人というように構成されているという説を唱えました。

つまり、親友や家族としてきわめて緊密な関係を築けるのは5人ぐらいが適正ということです。

ダンバーは、著書『How Many Friends Does One Person Need?』の中で、下記のように説明しています。

ダンバーズ新石器時代のチームの規模は120~150人程度

昔のイギリスの村は1集落160人程度

狩猟採集社会でも150人程度

現代の軍隊の中隊の数は130~150人程度

つまりダンバーズナンバーとは、コミュニティ内の組織レベルの最大値が150人ということを示しています。

ただしここに質の低い人間関係は含まれていません。

フェイスブックでの知り合いの数が多ければ多いほどいいということではなく、真に信頼できる親密な関係性を他人と築くことができるかが、人の幸福の最も大きな決定要因である…これは、数多くの権威ある研究でも幾度となく指摘されてきたことです。

そして、ハーバード大学の卒業生を75年間追い続けた研究など数多くの調査で、「人生で最も重要なのは、ほかの人との温かいつながりである」ことが明らかになっています。

キレる高齢者へと追いやる「孤独」は人の健康にも大きく影響

人とのつながりがあるかないかは、人の健康にも大きく影響します。

米国ブリガムヤング大学の2015年の調査では、35歳以上の350万人のうち、「社会的に孤立している」「孤独を感じる」「独居」のいずれかの場合、死亡リスクが26~32%高いことが分かりました。

孤独は、たばこや肥満と同様もしくはそれ以上の健康リスクであることが多くの権威ある研究によって裏付けされています。英国の調査では、51%以上の男性には2人以下しか友人がおらず、8人に1人が「まったく友人がいない」いう結果でした。特に年を取ると友人がだんだん少なくなり、「誰も友人がいない」と答えた率は、24歳以下は7%でしたが、55歳以上は19%に上りました。

【日本のオジサンは世界でいちばん「孤独」】

日本の高齢男性はなぜ孤独になるのでしょうか。

それは男性と女性の人との付き合い方の違いに関連しています。

世界でいちばん孤独男性は人と繋がる時は、一緒にスポーツをする、ゲームをする、など何かの物理的なきっかけを要するのです。

女性は、そうしたきっかけがなくとも、関係性を成り立たせることができます。

さまざまな機会にコミュニケーションを取り、人間関係を広げていくことができます。年を取るごとに友人づくりが難しくなる中、高齢男性は孤独に陥りやすい人たちということになります。

左から、スウェーデン、オランダ、アメリカ、デンマーク、アイルランド、ギリシャ、ドイツ

 アイルランド、イギリス、ベルギー、カナダ、フィンランド、OECD平均、フランス、韓国、スペイン

オーストリア、イタリア、チェコ、ポルトガル、日本、メキシコ

 

 

こうした傾向は世界共通のようですが、その中でも日本人の「孤独度」は世界の中でも群を抜いて高く、特に男性は世界一「寂しい人たち」という結果が出ています。世界の先進国が加盟する国際機関OECD(経済協力開発機構)の調査によれば、「ほとんど、もしくはまったく友人や他の人と時間を過ごさない人」の割合は日本の男性では約17%(女性は14%)で、先進21カ国平均の3倍近く、ダントツのトップです。

5人に1人の男性が絶対的孤独を抱えているのが現実です。

社会から置き去りにされたような孤立感は、生きがいや幸福感をむしばみ、生きる意欲をそいでいきます。

孤独を防ぐ第3の居場所づくりで「キレない」高齢者になろう

なぜ日本の高齢者とりわけ男性高齢者はここまで孤立し、キレるようになってしまったのでしょうか。

その要因に、日本社会に孤独を防ぐ制度(セーフティネット)がほとんど存在していないことが挙げられます。

居場所をつくる努力中年以降の男性が孤独を防ぐためには自らの努力で、同じ趣味仲間を見つけられるサイトを利用して気に入ったグループに参加したり、ペットを飼ったり、ボランティアをするなど、仕事以外での結びつきをつくることが重要ということです。

同じOECDの調査によると、欧米では教会を通じてボランティアなど3つ以上のグループ活動などにアクティブに所属するという人が多かったのに対し、日本はせいぜいひとつ程度です。セーフティーネットの少ない日本では、意識してこのような第3の居場所をつくる努力を怠らないように心がけましょう。

by株式会社 大東建設 阿部正昭

 

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