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伝統的な民家は『日本住文化』の結晶ですⅦ【町井家住宅】
今回も独断と偏見で、旧暦のお話から、入らせていただきます。
春分 末候 雷乃声を発す
年度末
今日は年度末ですね。入学、進級、進学、就職、転勤…。明日からたくさんの人たちが新しいステージに踏み出します。
「年のはじまりは1月1日、年度の始まりは4月1日」という制度は、1886(明治19)年に定まりました。
10月はじまり、1月始まりなど、試行錯誤を経たのちの決定だったそうです。
とはいえ、なぜそうなったのか、はっきりとした理由が分かっていないというのが不思議でもあり、面白いところですね。
いわば今日は、もうひとつの大晦日ってことです。明日からに備え、旧年度のご自分を労ってくださいね。
そして、雷乃声を発す(かみなりこえをはっす)
春の雷を、春雷といいます。ぴか、ぴかっと一、二度短く光るだけの、いわば旬の走りのような雷です。
昔は、雷の光が稲の実りをもたらすと信じられていたことから、いなづま(稲の夫(つま))と呼ばれるようになったとか。
七十二候では春分の末候が、雷乃声を発す。春の到来を告げる雷が鳴りはじめるという意味で、およそ三月三十日から四月三日ごろまでの季節です。
実際の春雷は、3月から 5月頃に発生するんですね。
寒冷前線が通り過ぎる時に発生する界雷で、この雷雨はひょう(雹)
になることもあります。
春の到来を伝える雷ともいわれる。雷鳴に驚き冬眠していた地中の虫たちが目ざめるという理由で「虫出しの雷」という呼び名もあるんですよ。
伝統的な民家は『日本住文化』の結晶ですⅦ
重要文化財指定民家【町井家住宅】
幾世代にもわたり風雪に耐えてきた日本の民家が、
経済・社会構造や生活様式の変化のなかで取り壊され、失われようとしています。
伝統的な日本の民家は、地元に育った木と地域の人々の技術で造られた住いであり、
「日本の住文化」の結晶といえます。
町井(まちい)家住宅
所在地:三重県伊賀市桝川 指定物件:主屋・書院 建設年代:主屋・延享元年(1744年)
特徴等:大庄屋の瓦葺民家で豪壮な梁組と洗練された室内意匠 所有形態:私有
構造形式:桁行15.2m、梁間13.2m、入母屋造、桟瓦葺、南面庇本瓦葺、西面突出部附属
町井家は武家の出身で天和2年(1682年)に現在の地に移り屋敷を構え、その後大庄屋を勤めました。
主屋は棟札より延享元年(1774年)、西側の客座敷は江戸時代後期の建築と考えられますが、建物は半解体修理の結果、江戸時代末期頃の姿に復元整備がされているようです。
主屋は南に面し入母屋造り・桟瓦葺・南面庇本瓦葺で、居室部は豪快な土間に接して3室を2列に配する整形六間取りとなっています。
三重県で六間取りは大庄屋に限られ、四間取りから発展した構成と考えることが出来きます。
書院は主屋西の式台付ゲンカン上手にツギノマ・ザシキが全体としては鍵型に連なり、主屋とは2畳の廊下でつながります。
この住宅は瓦葺の民家としては近畿地方でも古い部類に入ります。
すまいかた教室
歴史的なまち並を守るルール
監修 東京大学 野澤千絵 さん
<京都市姉小路(あねやこうじ)界隈>
約1200年前に平安京の都がおかれた京都は、長年にわたって、政治・文化の中心として栄えた歴史的な都市です。
現在でも昔の姿をしのばせる古い建物がたくさん残っていて、日本の代表的な観光地になっています。ところが、去年から今年にかけておよそ一年に渡っては、さすがの京都の観光も苦戦を強いられているようです。
コロナの話は扠置いておいて、以前、そんな京都の伝統的な風情を思わせるまちの一画に、高層のマンション建設の計画が持ち上がりました。
突然の計画に、まちの雰囲気をこれからもずっと大切にしたいと思う人たちが集まり、近隣の住民を中心とした「姉小路界隈を考える会」を結成しました。
そこでマンション建設業者に、京都のまちにふさわしい建物を建ててほしいと要望しました。
それを受けて業者は、この計画を見直しました。
建物の高さを、以前の計画より低くしたり、屋上にはマンションに住む人と近隣の人たちが一緒に使える屋上菜園を作るなど、時間をかけて地域住民と話し合いながら、マンションをつくりました。
この活動をきっかけにして、「姉小路界隈を考える会」は、まち並を守るために、まちに建てられる建物の用途を限ったり、高さを制限するルールをつくりました。
さらに、まちに似合う照明灯を設置したり、まち歩きのイベントを開催しています。
このように、今では住民が積極的にまちづくりに関わるようになっています。やはり、歴史的な町並みや建造物などは、そこに住む住民の意識無くして、保存することは有り得ないことだと思います。
集まって暮らす街と建物のルール
土地の使い方
建物にはいろいろな使い方があります。住まいは人が日々の生活を営むための、いちばん基本となる場所です。工場はいろいろなものを生産する場所で、大きな音をたてたり、危険なものを扱うところもあります。
いろいろな使い方の違う建物をゴチャゴチャに混ぜて建ててしまうと、落ち着いた生活や活発な経済活動がやりにくくなります。
そこで、地域ごとに建物の使い方や大きさを決めたルールがあるのです。そのルールを「用途地域(ようとちいき)」とよび、大きく住居系、商業系、工業系の3つに分類されています。
例えば、住居系では、背の低い住宅を中心に建てられる低層住居専用地域、マンションなどの背の高い住宅が建てられる中高層住居専用地域などがあり、建ててもよい住まいが限られます。
また商業系の商業地域には、飲食店やオフィス、劇場などの大きな商業施設が建てられます。工業系の工業専用地域では、住宅や商店などは建てられません。このようにして環境を守ったり、地域の発展を促しています。
建物の大きさ
建物の大きさをはかるために、いろいろなものさしが使われています。
たとえば「建(けん)ぺい率」は、敷地の中で、建物が建っている部分が敷地のどのくらいの部分を占めるかを表すものです。
つまり、建ぺい率が50%ということは、敷地の半分に建物が建っていることを示します。また、周辺の道路やお隣の建物の日当たりや風通しに大きな影響を与えないように、建物の各部分の高さを決める「斜線制限」や、建物の一番高い部分の高さを決める「高さ制限」など、建物の「高さ」を決めるルールもあります。
更に、どれくらいのボリュームまで建物を建ててよいか(これを「容積率」といいます)を決めるルールもあります。こうしたルールは、その地域に適した環境を保ったり、道路や上下水道などの公共の施設とのバランスを保つために決められています。
建物の見た目
みなさんは、どんなまちを見て美しいと感じますか。感じがいいなと思ったり、素敵だなと思うまちは、単に建物のかたちや大きさがそろっているだけではありませんね。
建物ひとつひとつが単体で美しいだけでは、建物の集合体である「まち並」は美しくはなりません。 反対に美しくない思う原因はいくつかあります。
遠くからでも目立つ派手な看板があるとか、大きさが周囲の建物と格段に違うものがあったり、道路に電信柱がたくさん立っていて電線が縦横無尽に走っていたり、ゴミが散らかっていたら、とても美しいと感じることはありません。
まちの見た目に関するルールは、その地域ごとにルールが違ってきます。たとえば、古い時代のまち並みを保ちたい場合には、外壁の仕上げや屋根の色を決めて、新しい建物でも古い建物になじむようにしなければなりません。
また、緑の多い住宅地にするため、道路と敷地の境は生け垣にしましょうというルールをつくることもあります。美しいまちをつくるためには、その場所、目的にあったルールをそれぞれにつくることが必要であり、大切なことなのです。