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ほとんどの場合、運動は「上る」より「下りる」方が健康にいい
ほとんどの場合、運動は「上る」より「下りる」方が健康にいい
このシリーズで前回は「熱いお風呂は体が冷えやすい!? 非常識のような常識」 (heiwadai.jp) (青字をタップするとこの記事に飛びます。)という健康に関する内容でした、引き続き今回も健康についてのお話をしたいと思います。それでは、みなさんご用意はよろしいでしょうか。 https://heiwadai.jp/ofurotokennkou/
運動不足の解消なら坂道や階段を下りましょう~骨の健康維持にも
坂道や階段を上るのは大変ですが、下りるのは楽にできます。しかし、下りる動作は意外なことに筋力トレーニングとしての効果が高いのです。下りる動作では着地のダメージで筋肉に微細な損傷が起こり、筋肉痛の原因となります。この筋肉痛を引き起こす階段下りの刺激が、筋肉を発達させる有効な刺激の一つになるのです。
自粛やリモートワークで運動量が減って体にエネルギーが余り、体重増加や健康状態悪化をもたらしています。これを改善しようと食事を減らすのは的外れで、日常生活での消費エネルギー=非運動性活動熱産生を増やすのが根本的な解決になります。
非 運動性活動熱産生(NEAT:non-exercise activity thermogenesis)とは、家事やオフィスワーク、立ち座り、階段の上り下りなど、「運動」とは呼べないような「日常生活活動によるエネルギー代謝」全般を指します。
運動不足によって筋肉が減って基礎代謝が下がることも体にエネルギーが余る原因のひとつです。
筋肉が落ちやすいのは下半身の筋肉で、とりわけ太ももの前側の筋肉である大腿四頭筋の筋肉量と筋力の低下は顕著です。
では、この大腿四頭筋の筋力と筋肉量を高めるために最も効果的な日常生活動作は、A.B.C.のうち、どれでしょうか?
A | 歩行 |
B | 階段上がり |
C | 階段下り |
膝を曲げる角度が大きいほど負荷が上がる
答 えは「Cの階段下り」です。
いかがでしたか? 案外、Bと答えた方が多いのではないでしょうか。
歩行ではさほど大腿四頭筋を鍛える効果がありません。
立った状態では膝を曲げる角度が大きくなるほど大腿四頭筋にかかる負荷も大きくなります。
歩行時は膝をほとんど曲げないため、大腿四頭筋にかかる負荷は非常に小さく、鍛える効果はほとんどないのです。
これに対して階段昇降時には、膝を45°程度(膝を伸ばした状態が基準)曲げるため、大腿四頭筋に大きな負荷がかかります。
では、階段の上りと下りではどちらのほうが効果的なのでしょうか。
実感としては、階段を下るより上るほうがキツく感じます。ところが、つらく感じる階段上りよりもラクに感じる階段下りのほうが、健康や美容の要となる大腿四頭筋を鍛える効果があるのです。 その理由と効果的な階段の使い方を説明します。
階段の上りと下りで使う筋肉が違う
まず、階段の上りと下りでは「筋肉の収縮の仕方」が異なります。
筋肉の収縮の仕方は、大きく2つに分けられます。1つは重りを持ち上げるときに筋肉が縮みながら力を発揮するもの、もう1つは重りを下ろしていくときに筋肉が伸ばされながら力を発揮するものです。
前者を「コンセントリックな収縮(短縮性収縮)」、後者を「エキセントリックな収縮(伸張性収縮)」と呼びます。階段昇降では、上りで下半身の筋肉がコンセントリックな収縮をし、下りでエキセントリックな収縮をします。
筋トレではこれまで、コンセントリックな収縮に重点が置かれてきました。しかし近年、オーストラリア・エディスコーワン大学の野坂和則教授らの研究によって、コンセントリックな収縮よりもエキセントリックな収縮のほうが筋肉を鍛える効果が高いことが明らかになってきました。
階段下りのほうが大腿四頭筋を鍛える効果が高い理由は、もう1つあります。
それは両者で使う筋肉が異なることです。階段を上る際には、上段側にある足の膝関節と股関節が曲がり、両関節が伸びることで体が持ち上がります。
膝を伸ばす筋肉は大腿四頭筋、股関節を伸ばす筋肉はお尻の大殿筋です。
上りではこの2つの筋肉が協働して体を持ち上げるため、負荷が分散します。
これに対して階段の下りでは上段側にある膝だけが曲がり、大腿四頭筋のみで体を支えることになります。膝の曲がる角度も下りのほうが大きいので、大腿四頭筋により大きな負荷がかかります。
これらの理由から、階段下りは最も衰えやすい大腿四頭筋を鍛える効果的な運動というわけです。
階段の下りは骨の健康維持にも効果あり
階段下りの効果はこれにとどまらず、体の支柱である骨を鍛える効果もあります。
筋肉量も骨量も基本的には加齢に伴って減少していきますが、骨は筋肉と違って高齢になると増やすことが難しくなり、骨量の維持が重要にります。
骨は、骨を破壊する破骨細胞と骨をつくる骨芽細胞の両者が働くことで、日々新しく丈夫な骨へと新陳代謝が行われます。そして、骨芽細胞の働きを促すのは、骨に対する縦方向の刺激です。
立った姿勢で足裏から体に加わった衝撃が骨に伝わることで、骨の新陳代謝が促されるのです。
日常生活ではジャンプのように骨に刺激を与えるダイナミックな動作はほぼ皆無ですが、その例外的な運動が「階段下り」です。
スポーツ&サイエンス社の実験では、その場で連続ジャンプを行うのと階段を下るのとでは、同程度の衝撃が体に加わることがわかりました。
日常生活動作でありながら、筋肉も骨も鍛えることができ、しかもラクにできる階段下り。今すぐ始めて損はありません。
目安として、1日合計4階分の階段下りを週に3回続けるだけで十分な効果が得られます。
自宅やオフィスの階段で数週間続けるだけでも大腿四頭筋の筋力がアップし、骨量も増えていきます。
かかと落しやミニジャンプなどの運動も効果的です。
大腿四頭筋の力がついたら、階段上りも
階段上りでは股関節の動きが大きくなるため、大殿筋も使われます。
大殿筋は大腿四頭筋と並んで強く大きな筋肉で、各種のスポーツ動作はもちろん、日常生活動作でも活動源となる大きなエネルギーを生み出します。
階段上りの動作は、筋トレの王様といわれるスクワットの動作と酷似しています。
スクワットと比較して関節の動きは半分程度ですが、片脚で行うので、実際には自重を用いたスクワットと遜色ないエクササイズです。
大殿筋以外に太もも裏にあるハムストリングスからふくらはぎの下腿三頭筋まで、下半身全体をまんべんなく鍛える効果がありますので、階段下りに慣れたら階段上りをお勧めします。
筋力を付ける正しい階段の上り方、下り方
何気なく使っている階段もやり方によっては非常によい筋肉と骨のトレーニングになります。
日常生活での消費エネルギー(非運動性活動熱産生NEAT)を増やすため、筋肉をつけるために取り入れていただければと思います。
■階段下り(大腿四頭筋を鍛える)
①階段の端に立ち、階段側の手を手すりの近くに置く。両足のつま先を正面に向けて、背すじを伸ばしたら片方の脚を伸ばしたまま前に出す
②後ろ側の膝をゆっくりと曲げて体を下ろし、つま先、かかとの順で前側の足を下の段に置く。同様にゆっくりと左右交互に足を進めて階段を下る
※足の内側(親指側)を意識して、つま先を階段に下ろす
■階段上り(下半身の筋肉を鍛え、平衡性と股関節の柔軟性も高める)
①階段の端に立ち、階段側の手を手すりの近くに置く。両足のつま先を正面に向けて、背すじを伸ばす
②片方の足を上の段に乗せて体重をあずけたら、前側の脚を伸ばしながら体を引き上げる。同様にゆっくりと左右交互に足を進めて階段を下る
※前側の足で階段を踏みしめてゆっくりと上る。後ろ脚で階段を蹴らない
上りの「階段一段抜かし」は筋量が増え基礎代謝が上がる
余裕ができたらぜひチャレンジしていただきたいのが、「階段の1段抜かし上り」です。
1段抜かすだけで体重相当の重さのバーベルを担いでスクワットをするのと同程度の負荷になりますし、片足立ちの時間が長いために平衡性(バランス維持能力)も高まります。
また、股関節を大きく動かすため、お尻ともも裏の柔軟性を高めることもできます。
筋トレも「上げる」より「下ろす」が大事
まずはクイズです。筋肉を鍛えて大きく強くするのは筋トレですが、その筋トレを効率よく行うために最も大切な要素は次のうちどれでしょう?
A | 持ち上げる重量 |
B | 反復回数 |
C | フォーム |
答 えは「Cのフォーム」です。正解できたでしょうか?
ジムで何時間もかけて何年、何十年と筋トレをしているにもかかわらず、筋肉がほとんど増えていない人に共通することは、「フォームの不正確さ」です。
逆に短時間・短期間でもしっかり筋肉がついている人に共通しているのは、「フォームの正しさ」です。
重いものを持ち上げても、鍛えたい筋肉に負荷をかけるフォームになっていなければ意味はなく、それとは反対に、軽いものでも鍛えるべき筋肉に的確に負荷をかければ、驚くほど筋肉は発達するのです。
筋肉に効かない悪いフォームの典型は、以下の2つです。
A ダンベルやバーベルなどの重りをゆっくり持ち上げて速く下ろす
B 重りを床などに落とした際の反作用を利用して持ち上げる
両者に共通しているのは、重りを「しっかりと下ろしていない」という点です。
重りを持ち上げる際、筋肉は縮みながら力を発揮します。これを“コンセントリックな収縮”と呼びます。
そして重りを下ろす際は、筋肉は伸びながら力を発揮します。こちらは“エキセントリックな収縮”と呼びます。
現在、筋トレをしている方が今すぐ簡単にエキセントリック・トレーニングに切り替えられる方法もあります。
動作スピードを調整するという方法です。
従来の筋トレでは、重りを持ち上げるコンセントリックな収縮に2秒かけて、重りを下ろすエキセントリックな収縮に2~3秒かけるのがスタンダードな動作スピードです。
これをあえて、1秒以内にコンセントリックな収縮を終わらせ、エキセントリックな収縮を2~5秒かけてゆっくり行う。
これでエキセントリック・トレーニングへと切り替わります。
■エキセントリック・スクワット(太もも前の大腿四頭筋とお尻の大殿筋を鍛える)
①両手を太ももにおき、上体を前に倒す際の勢いを利用して、息を吐きながら1秒で立ち上がり、腕を前に伸ばす(コンセントリックな収縮)
②息を吸いながら2~5秒かけて膝と股関節を同時に曲げてイスに座る(エキセントリックな収縮)
※この動作を6~10回繰り返し、60秒程度の休息を挟んで3セット行う。
2~3日の休養を挟んで週に2回行う
■エキセントリック・シットアップ(お腹の腹直筋を鍛える)
①仰向けに寝て膝を立てたら頭上に腕を伸ばし、その腕を前に振る勢いを利用して、息を吐きながら1秒で上体を起こす(コンセントリックな収縮)
②息を吸いながら2~5秒かけて背中を丸め、背中の下部から順番に床に下ろしていく(エキセントリックな収縮)
※この動作を6~10回繰り返し、60秒程度の休息を挟んで3セット行う。
2~3日の休養を挟んで週に2回行う
最小努力で最大の効果が得られるエキセントリック・トレーニングですが、1つだけ欠点があります。それは筋肉痛が起きやすいことです。
継続して体が慣れてくれば、やがて筋肉痛は起こりにくくなるので安心して取り組んでください。