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【無闇(むやみ)な二階増築は危険極まりなく、しかも割高】(間違いだらけのリフォーム⑥)
今回も独断と偏見で旧暦のお話から入らせていただきます。
白露(はくろ)次候 鶺鴒鳴く(せきれいなく)
人生の大先輩
長年にわたり社会や家庭のために働いてきたお年寄りは宝です。
そのため日本人は昔から特定の年齢の、とくに長生きをみんなで祝う「年祝い」を受け継いできました。
「敬老の日」は人生の先輩を敬い、その知識や経験を伝えてもらおうと、兵庫県のとある村で「としよりの日」を定め敬老会を開いたことがきっかけでつくられました。
数え年の61歳で迎える「還暦(かんれき)」をはじめ、70歳の「古希(こき)」、77歳の「喜寿(きじゅ)」、80歳の「傘寿(さんじゅ)」、88歳の「米寿(べいじゅ)」、90歳の「卒寿(そつじゅ)」、99歳の「白寿(はくじゅ)」、100歳の「百寿(ひゃくじゅ)」など、それぞれの年齢を寿(ことほ)ぎお祝いします。
・今日をたのしむ
【老人の日】
兵庫県多可郡野間谷村(現・多可町)で発案された「としよりの日」が9月15日に制定されたことから、1966(昭和41)年、国民の祝日として制定された「敬老の日」も同日に。今では9月の第3月曜日へと変わりましたが、今日は「老人の日」。今日から9月21日までが「老人週間」となっています。
【ひじきの日】
健康食・長寿食として、ヒジキに親しんでもらおうと定められました。
【無闇(むやみ)な二階増築は危険極まりなく、しかも割高】(間違いだらけのリフォーム⑥)
前回ブログ→ 【勘違い!狭くなったから増築(リフォーム)】(間違いだらけのリフォーム⑤) https://heiwadai.jp/kanntigairifo-mu/ のお話をお伝えしました。(青字のタイトルタップするだけで前回記事に飛びます。なので、よかったらお読みください。)
今回は【無闇(むやみ)な二階増築は危険極まりなく、しかも割高】(間違いだらけのリフォーム⑥)というタイトルでお伝えしたいと思います。
【「二階増築は安全最優先で!】
最近都市部では、平屋建ての家をほとんど見かけることがなくなりました。地価の高い地域では、平屋を建てるような、もうそんな贅沢はもっての外というのが実情のようです。古い家の中にはまだ平屋建てもちらほら見かけますが、住んでいる人の話を聞くと、近々建替えるか、さもなければ二階を増築しようかと考えていらっしゃるケースがほとんどです。
では、平屋建ての家が手狭になってしまった場合、建替えるほうが実際に得なのでしょうか。それとも二階を増築するほうが経済的に得なのでしょうか。
答えは明快です。私なら、いさぎよく解体して新しい家を建てます。二階を増築するのは、一般の方が考えるほど簡単なものではないからです。
だいいち、今の時代、二階増築を請け負ってくれる大工さんなど、ほとんどいないのではないでしょうか。なにしろ二階増築は、大工さんにも、建て主さんにとっても、満足しにくい仕事なのです。
何といっても作業が複雑で、手間が何倍も掛かるからなのです。大工さんにとっては、労多くして儲(もう)けの少ない仕事ということになります。それでは儲けになるような見積もりをすればいいのでは?という声が聞こえてきますが、建替えるよりも掛かってしまうような金額では、大抵の建て主さんは、引いてしまうと思います。
一方、建て主にとっては、新築と比べて割高感があります。新築なら坪50万円か60万円でできるのに、二階増築の場合は100万円見当になります。そのわりに、出来栄えは新築と比べて見劣りするために、どうしても不満が残ります。
大工さんの身になって考えれば、そんな工事は引き受けたくないのは当然だと思います。
それくらい実際には掛かってしまうということです。
それにしても、二階増築はどうしてそんなに割高になってしまうのか…。不可解かもしれませんが、それにはそれなりの分けがあります。
ます、すでにある平屋の上に二階をつくるため、一階部分の構造を十分に調べる必要があります。とくに柱や筋交いの大きさや位置、基礎の強度などは重要極まりないもので、構造の専門家に調査を依頼しなければなりません。
さらに確認のために、一部、外壁や床を壊して内部を調べてみる必要もあります。壊してみて、いざやめようなっても、元に戻す費用も含めバカにならない出費をまぬがれません。
①北側斜線など法規制オーバーに注意
②地震や強風でくの字になる
③2階までの添え通し柱で補強する
④新しい基礎で補強する
⑤基礎が1階用のため重量に耐えられない
設計する場合にも、階段の位置や一階と二階の構造の取り合いなど、いろいろと制約も多く、複雑怪奇です。何の制約もない更地に、自由に設計するのとはわけが違うのです。そのため、調査や設計の段階で、新築と比較して、おおよそ五割増の費用が掛かります。
それ以上に大変なのが工事期間中です。二階を増築するためには、従来の屋根をはずしたり、雨除けのための養生(ようじょう)(仮設工事)が必要となってきます。既存の基礎や、柱梁の補強も必要です。
その上、ほとんどの工事が二階での作業となりますので、部材を持ち上げるだけでも大変な作業となります。そんなこんなで、新築の2倍近いか、それ以上の労賃が掛かってしまいます。
二階増築をお奨めしない理由は、他にもまだあります。構造上でも二階増築は危険だということです。
二階増築は「御神楽普請(おかぐらふしん)」と呼ばれ、家の形が神輿(みこし)を担いだようだという意味で、昔から家相的にも忌み嫌われてきました。神輿には脚がありません。ひょいと持ち上げて、どこにでも置けるのが特徴です。
御神楽普請も、一階の梁の上に二階を載せただけで、地面から二階の屋根まで通し柱が立っているわけではありません。ですから、横からの強風や地震に対して弱いのは当たり前です。
実際に阪神大震災でも、そのような御神楽をやった構造の家では、二階が落ち込むように倒壊しました。もともと平屋用につくられた基礎が、二階の重さに耐え切れず、建物全体が足元から傾いてしまったのです。
ですが、このような話をすると、御神楽リフォームをやった家だけが悪かったような印象を受けてしまいますが、倒壊している建物の全部が御神楽普請だったわけではありません。
構造を無視したリフォームや新築をした建物は、すべからく倒壊に至っていますので、ご了承いただければと思います。
御神楽普請の話に戻りますが、大変費用が嵩(かさ)む割に危険なので、極力避けるほうがいいでしょう。ですが、現実には、どうしても二階を増築しなければならない事情もあります。
そう言う私自身、建て主さんの強い要望で二階増築をお引き受けしたことがありました。ただし、そんなときは徹底的に補強工事をする旨をお伝えし、工事に臨みました。
まずは従来の基礎を補強しながら、すぐ外側にもう一重の基礎をつくります。そして新しい基礎の上に添え柱として通し柱を建てます。既存の柱の両隣にもう一本ずつ、二階の重みを受けるための柱を立てていきます。
そして最後に、古い柱と新しい柱や通し柱をきっちり貫通ボルトで緊結します。基礎も同じく古い基礎と新しい基礎を十分にボルトで緊結し接着剤を混ぜたコンクリートを流し込みます。
もちろん、費用は新築以上に掛かってしまうことも伝えてありました。基礎や柱を二重にするなんて無駄だと思われるかもしれませんが、現在から将来に掛けての安全性を考えれば、費用よりも安全性を第一優先で考えるのは当然のことだと思います。