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欄間(らんま)と地袋は住まいの名脇役です〈住まいを考える⑤〉
今回も独断と偏見で、旧暦のお話から、入らせていただきます。
白露(はくろ)次候 鶺鴒鳴く(せきれいなく)
「嫁に食わすな」
漬物や炒め物など食卓で大活躍するナスの露地(ろじ)物は、7〜9月にかけて出回ります。
ナスはインド原産で暑さに強いものの、次々と実を成らせていると次第に収穫量が減っていくのだとか。
そこで真夏に枝や根を剪定(せんてい)し、結実しないようにします。やがて涼しくなる頃には再び花が咲き、実がなるように。
これが「嫁に食わすな」でお馴染みの秋ナスです。
秋ナスは身も皮も柔らかく旨味たっぷり。
先のことわざは、美味しいものを惜しむ意地悪から生まれたとする説と、体を冷やすとされるナスからお嫁さんを守る優しさが根底にあるとする説があるそうです。さて、真相はいかに。
白露の次候は、鶺鴒鳴く(せきれいなく)。およそ九月十二日から十六日ごろのこと。鶺鴒はチチィチチィと鳴く、尾の長い小鳥です。歩くときは尾をひょこひょこ上下に振ります。昔、男女の神さまが契の結び方がわからず困っているときに、ちょうど現れた鶺鴒の仕草を見て悟り、ぶじ睦み合えたといいます。それで鶺鴒は恋教え鳥とも呼ばれているんですね。
時有鶺鴒、飛来揺其首尾。二神見而学之、即得交道
(そのとき鶺鴒が飛んできて首尾を揺らしました。二神はそれを見て学び、ぶじ結ばれました)『日本書紀』より
昔は『日本書紀』のような公の文献に男女の交わりの話を載せるとは、かなり、おおらかだったんですね¨̮♡
欄間と地袋は住まいの名脇役です〈住まいを考える⑤〉
誰に気にかけることもない一人暮らしはきままでこんなに素晴らしいものはありませんが、プライバシーの意識が過剰に高まると、住宅の個室化が進んでいきます。
すると何が起こるかというと、どうしても家族のコミュニケーションも希薄になってしまいます。そればかりではありません。各部屋一室ごとにエアコンが必要になってしまいます。
至って不経済であり、冷やし過ぎになり、不健康な間取りにさえなってしまうのです。
↓部屋から部屋へ風が通りません
↓風や光が通ります
そこで、部屋の上と下に欄間と小窓を設え、風や光が通るようにしたらどうでしょうか。とくに、プライバシーを必要としない子ども部屋、居間と客間、トイレと浴室・洗面所などの仕切り壁に開口をつくり、風や光の通り道をつくります。
もちろん、欄間は光がとおるようにガラス戸にして、風がとおるよう開閉できるようにします。外部の光が内部にまで届き、風は家の奥まで通り抜けるようになり、自然な開放的な空間に生まれかわります。
〈格子戸や無双戸!手入れは大変だけど、それ以上におすすめ!!〉
いにしえの日本の家並みは、格子で構成されていました。格子はご存知木の細い桟を細かく並べたものです。ほどほどに光と風を通し、防犯などセキュリティにも効果があります。
昼間は外から室内を見ても内部はほとんど見えませんが、室内側からは外の様子がよく見え、分かります。
もちろん夜は、明るさが逆転するので、外から内部がよく見えてしまいますが、格子から漏れる光が美しく、外の人たちも安心して歩くことができ、むしろ防犯にも役立っていました。
この美しい格子を見直し、自然の風を取り入れるようにすることをお薦めします。
さらに、先人たちは、さまざまな知恵を働かせて木材を利用した素晴らしい建具や板塀などを発明して、後進に引き継いできました。自然に還りにくいアルミなどの建材よりも、このような天然の木材の建具を使うことは、大きな意味で地球環境にも貢献することなのです。
・格子
左:昼間に外側から視た格子。室内のほうが暗いのでなかのようすはほとんど見えません。
右:昼間内側から外を見た格子。外は明るいのでぼんやりと往来のようすが、うかがえます。