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【寒いトイレにだけは勝てなかった上杉謙信】[収納の学び舎【第11回】]
【寒いトイレにだけは勝てなかった上杉謙信】[収納の学び舎【第11回】]
武田信玄のライバルとして、川中島での度重なる合戦や一騎打ち(写真)などで、常勝の将として知られる上杉謙信は、寒いトイレが原因で天下を取り損なった不運の人だといわれています。
36歳の時に病にかかり、左足が不自由になりました。そのストレスから、梅干を肴に酒を呑み、とうとうアルコール中毒と高血圧になってしまいました。
1578年、49歳の上杉謙信は織田信長に対抗して大軍を春日山城に集結させ、念願の天下に号令するため準備を進めていましたが、ある寒い日の朝、便所で用をたし、立ち上がったときにめまいを起こして倒れ、4日後に死亡。死因は脳溢血でした。
実は、この数日後には京都へ向けて出発する段取りであったといわれています。謙信が上洛を開始すれば、通り道である織田信長の領土を避けては進めず、信長との合戦は不可避でした。
そして、当時の信長の武力ではとうてい謙信には万にひとつも勝てなかったといわれています。そういう意味では信長の天下統一は寒いトイレのおかげともいえるわけで、やはり強運の持ち主といえそうです。
いっぽう武田信玄は、当時の武将としては珍しく、畳敷の暖かいトイレを特別に設(しつら)え、お香を焚いてリラックスして戦略を練るのを常としたのだそうです。
トイレは不浄で寒いもの、という認識の上杉謙信は、アメニティ(?)にこだわった武田信玄に一歩およばなかったというわけです。それだけに寒いトイレや浴室は、危険極まりない場所だといえます。
一般的な日本の家は、居室は南側、トイレ・浴室・台所などの水回りは北側に設置するのが標準的です。中でもトイレ・浴室は、ほとんどが北側に位置しているのではないでしょうか?
このため冬になると日当たりの悪いトイレ・浴室が特に冷え込み、ほかの部屋との温度差が極端になる原因にもなっています。もちろん、トイレを南側の日当たりの良い場所にもってくる方は、ほとんどいらっしゃらないとはおもいます。ですが、北側の日当たりの悪い部屋だったとしても、暖かくさえなっていれば、問題はないのです。
現代の日本でも、冬、暖房の効いた部屋から一歩廊下などの寒い空間に出ると、急激な温度差を生じます。そのようなとき私たちの身体の血管は収縮し、熱を逃がさないように防御します。
ところがお年寄りは急激な血管の圧力に耐えきれず脆くなった血管は切れてしまいます。たとえ、きれなくとも収縮された血管が、お湯に浸かり急激に広がり意識障害を起こし、溺れてしまうことが頻繁に起こっていることは、以前このシリーズでもお話させていただきました。
寒いトイレや脱衣室で倒れたり、湯舟の中で「ヒートショック」をおこし溺死する事故が後をたたないのはこのためです。とくに欧米と異なり、素足文化の日本人は足元を暖める工夫が必要です。
左下の写真は、足元を冷やすと下半身の血管が収縮し、内臓や頭部に血液が集中する様子を示すサーモグラフィです。日本人に心筋梗塞や脳卒中の発作が多く見られるのは、やはり素足文化に由来するものでしょう。
段差のバリアフリーはここ十数年では改善され、現在の住宅のほとんどが採用していますが、実は段差よりもこの温度のバリアフリー、「ヒートバリア」こそが人の健康と生命に重要な意味を持っているのです。
下のグラフは浴室暖房の普及率と、高齢者の溺死(主に入浴事故)の関係を調べたものです。欧米と韓国のデータは、トイレと洗面をともなうバスルームのもので、日本は浴室だけのものです。
ひと目で浴室に暖房設備がどうしても必要な理由が分かりますね。右側の棒線は入浴事故のグラフですが、寒いトイレで脳卒中を引き起こす傾向も同様かと思われます。
トイレや浴室の暖房設備導入にあたっては、日本独特の素足文化も考慮し、できるだけ足元を暖める設備器を検討しましょう。また、大規模なリフォームをご検討中でしたら、建物全体の断熱性能をアップし、欧米のようにヒートバリアーのない、安全で快適な環境を実現する断熱リフォームもご検討ください。
この図は、部分的な改修で浴室の温度環境を改善するアイデアです。
通常は暖房しない空間である廊下を通り抜けずに、居間からバスルームへ移動できるようにすることで、温度差が一挙に解消されます。
同時に、調理しながら洗濯などの家事を行う際の動線も短くなります。
このように、リフォームというのはお部屋の模様替えだけではなく、「温熱環境をデザインする」という発想も重要です。
ヒートショックも怖いけど、消費税ショックにもご用心
今季の冬季オリンピックは北京ですね。二十年近く前の北京オリンピックでは野球やソフトボールはこの大会で最後になるといわれていましたが、今年の東京オリンピックで復活し、どちらも金メダルに輝きました。
さて、二十年近く前の北京でのオリンピックでも住宅業界にちょっとした異変が起きていました。そのときは中国の建設ラッシュで「鉄」が猛烈な勢いで値上がりしているのです。今回の冬季オリンピックの影響だけではありませんが、あらゆる建築資材が不足状態になってきています。
住宅建築の場合、資材の相場も大きいのですが、今後は国からの住宅購入の後押しが少なくなってきます。住宅ローン減税の縮小も大きな話題ですが、それよりもこちらの方が更に大きいかもしれません。それは消費税です。政府の方針は2007年度より消費税を2ケタ台に引き上げる方針で、10年先送りされ現在ではとうとう10%になっています。
安倍総理の際には、コロナの影響がリーマンに近いかそれ以上の状況になった場合引き下げもしくは期限付きでも撤廃を考えるということでしたが、そんなことはどこ吹く風というように、その後の菅前総理、岸田現総理もまったくといっていいほど触れることもありません。
それどころか、コロナで借金を大幅に増やしてしまったので、最終的には20%まで上げようとしているくらいなのです。
さて、現在は2000万円の家を建てると消費税が200万円。仮に20%になると、消費税は400万円になります。その差はなんと200万円。200万円貯蓄しようと思うと大変です。月々6万円で34ヶ月。さらに実際には資材の仕入れや職人さんの手間賃等にも消費税アップの影響はあります。単純に10%のアップとはいかないかと思います。
ちなみに前回、前々回の消費税アップのときは3%から2%上がって5%になり、その後5%から3%上がって%となりました。このときに何が起こっていたのでしょうか?それは消費税アップによる駆け込み需要で前年比12%増と、着工件数が膨れあがったのです。
その為、建設資材が不足し材料が手に入らないという現象が現場では起こっていたのです。実際は買い占めが原因だったようですが、入ってくるべきもの入ってこないとなると現場はメチャクチャです。
使いたい材料が手に入らない為に仕様変更は当たり前、材料がやっと入ってきたと思ったら今度は工期が足りない。これでは現場の職人さんが良い仕事を出来るわけがありません。
消費税アップは駆け込み需要に限らず、いろんなところに弊害が出てきます。
今回もコロナ禍にもかかわらず消費増税に手を付けないという愚行のために、建築資材がいたるところで逼迫しています。
良い住宅を建てたいとお考えの方は、早めのご計画が良いかもしれません。もちろん、リフォームも含めてのことですが、くれぐれも住宅建築はゆとりをもって計画したいものです。
[収納の学び舎【第11回】]
■子供部屋は必要?不要?
今回は、子ども部屋のありかたについて考えてみます。私は、海外の建築を日本の店舗などに取り入れてきた関係で、多くの欧米の家庭を訪問し、その収納の技術や、暮らし方に直接触れる機会を持つことができました。
そして、住まいの中で子ども部屋ほど親子関係や家族生活、その国の文化などを反映している空間はない、という印象を持ちました。
現在、日本で問題にされている不登校や引きこもりなど子どもの問題は、日本独特の親子関係、特にコミュニケーションの取り方の誤りが現れているのではないかと考えています。
どういうことかというと「子供の自立」という視点です。欧米では18歳で子供は独立します。成人して親と同居しているというのは何らかの問題があるのでは、と見られる社会の規範があるようです。
したがって、親は子が18歳になるまでに「しっかりと生きる術(すべ)」を教えこむという自覚があり、コニュケーションはおのずと会話が中心になります。
いっぽう日本では子は親の面倒を見るという社会的な雰囲気が残っており、親も「できれば子の家族と同居したい」という気持ちから、子供の独立という事態を無意識に遠ざけがちになっているようです。
この結果、日本の親の多くは、子どもの世話を焼いてあげることが愛情表現である、という「世話型コミュニケーション」になっているのです。欧米の「会話型コミュニケーション」との違いは明らかだと思います。
欧米の子供は小学校高学年にもなれば、子ども部屋の掃除・衣類の収納・家具の配置変えなどの管理を、当たり前のように自分で行います。
これに対して、日本では子ども部屋を「勉強部屋」と呼び、子どもが勉強に集中できるようにと、掃除から片づけ、家具の配置変えまで親がすべて行ってしまいます。
そして、「子供の世話をする」という行為が子育てそのものであり、いかにこまめに世話をしてあげるかが愛情である、という認識が当たり前のようです。
さて、あなたはどちらのタイプでしょうか?
もし、「世話型コミュニケーション」が中心になっているようなら、ぜひこの機会に「会話型コミュニケーション」へ切り替えていきましょう。学習机の選び方や子ども部屋のリフォームなどを通して、子どもの家事の分担や子ども部屋の管理の責任について、親子で話し合われるべきだと思っています。
このような視点から、北欧で生まれた『Vas Plus』を利用した学習机や間仕切り収納をおすすめします。自分の持ち物に応じて収納量やしまい方を自在に変更できるシステムですから、楽しみながら整理整頓の習慣を身につけることができるわけです。
さて、次回の「収納の学び舎」では具体的な子供部屋のレイアウトの工夫(子どもの成長に合わせた空間のデザイン)についてご提案させていただきたいと思っています。お楽しみに…。