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暑さを凌ぐいろんな建具〈風通し考⑥〉
今回も独断と偏見で旧暦のお話から入らせていただきます。
芒種 末候 梅子黄なり(うめのみきなり)
梅子黄なり(うめのみきなり)
昔の人は、梅の実りとお米の豊作に関係があることを知っていたのですね。
なので、この時期になると、梅の実が黄色く熟し始めるのを今か今かと待ちわびていた様子が伺えます。
七十二候で芒種の末候は、梅子黄なり(うめのみきなり)です。梅の実が黄色く熟すころという意味です。
令和3年の今年は、およそ6月16日から20日ごろのことです。
梅田椎麦(うめたしいむぎ)といって、梅の実が多く実った年は、稲が豊作になるといわれます。
また椎の実が多いと、翌年の麦が豊作になるといいます。
梅雨は梅の雨と書きますが、喜雨(きう)という別名があります。梅が熟すのを喜ぶ雨という意味です。
そして、この喜雨にはもうひとつ、日照りが終わりを告げる雨という意味もあります。
現代では、梅雨はどうしても、ジメジメした暗いイメージがありますが、生活の糧と直結していた、昔の人にとっては梅雨はくありがたくて、ありがたくて仕方のない存在だったことが想像できます。
暑さを凌ぐいろんな建具〈風通し考⑥〉
【さまざまな風向きを調整してくれるルーバー】
風は気温と湿度を調整し快適な環境をつくるためには欠かすことのできないものです。利用しない手はないと思います。必要不可欠といっても過言ではありません。
人間はもちろんのこと、住まい自身の耐久性にも一役買っています。
風は窓や扉の開口部から入ってきますが、風の流れと開口の向きが適切でなければ、どんなにいい風が吹いても住まいの中までは入ってきてくれません。
窓の前に下図のような可動式のルーバーを取り付けて、風の吹いている方向によって、ルーバーを調節すれば、風向きを強制的に変えて室内へ風を引き入れることができます。
また一方場所によってはルーバーの羽の大きさや密度を変えてあげれば、防犯や視線を遮る役割も兼ねることができるのです。
【通過する風を室内に取り込むには…】
① ルーバーが窓に並行だと風が通過してしまいます。
② 風の吹いている方向によって、ルーバーを調整すれば、風を反射する役目をして風を室内に取り込むことができます。
図
③窓と平行に風が吹いている場合、反射板のようなものを設置すると、室内へ風を取り込むことができます。
④ 1枚だけの風向きを変えるルーバー建具
これでも意外なほど風を取り込むことが可能なのです。
図
① 風を入れるときは上図のようなルーバーの角度にします。
② 風を入れたくないときや避けるときのルーバーの角度はこちらになります。
③ せっかくルーバーを設置するなら、風の反射だけの役割ではもったいないので目隠しや防犯にも役立ってもらいましょう。それには可動ルーバーを1枚だけでなく何枚か設置する必要があります。
① 風を入れたいときは、複数の風向き可動ルーバーを風を取り入れたい角度にします。
図
② 風を入れないとき、入れたくないときはルーバーを回転させることによって開閉し、採光も調節可能となります。
【意外と難しいマンションの通風計画】
マンションで通風を確保するのは意外に難しいものです。なぜかというと、個室化されていることです。そして、廊下側の開口が極端に少ないことです。
一般的にマンションでは唯一玄関ドアが大きな開口ですが、防犯のために開け放して寝るわけにはいきませんので、そのための工夫が余儀なくされます。
①防犯上の命綱でもあるドアチェーンが一つだけでは安心できないかもしれません。その場合はWでの設置をお薦めします。
図
②ドアチェーンを設置して防犯に備えます。
③マンションの玄関ドアは通風の切り札であり、最後の砦です。
まず最初、内側に網戸を付けます。そして次に防犯のためにドアチェーンを付け、ドアを半分開いた状態にしておけるようにします。よりセキュリティを強化したい場合は、ドアチェーンをもう一つ以上追加します。
ただし、音が漏れるなど多少プライバシーは損なわれますが、省エネのために、どちらを取るかの選択も必要となります。
【障子と簾(すだれ)の組み合わせコラボレーション】
障子は室内に落ち着いた雰囲気を与えてくれる、日本発祥の最高に…採光に優れた建具です。ところがです、風通しに関しては、あまり通してはくれません。なので、その点においては必ずしも夏の時期に適している建具とはいえないのです。
いにしえの京都の人々は、驚くことにこの問題点を解決する方法を昔っから知っていたのです。通常、障子は紙を張った明かり障子を指すのですが、京都には夏バージョンで簾(すだれ)を組み込んだ簾障子(すだれしょうじ)という優れた建具があるのです。
簾障子は細い竹材を編んだもので、夏になると建具を衣替えするのです。障子からこの簾障子に建具ごと取り替えてしまいます。
現在どれだけの割合で障子建具ごと衣替えをしている家庭や職場があるかまでは分かりませんが、いかにも京都らしい風流な夏の過ごし方だと思います。
ある意味、昔から京都の町はそれほど暑かったということも伺いしれます。
そのような自然を利用した工夫だけで、涼や暖を取るという工夫をしていれば絶えず脳も刺激を受けて、もちろん、老化防止にも貢献しているのだと思います。
老い知らずの町 京都いいですね。
①障子と簾のコラボレーション→
図
②障子紙を張っていない障子戸
③障子戸に簾を張りつけて風の通る障子が完成です
簾障子(すだれしょうじ)と同じように、紙を剥がして、簾に張り替えれば簡易簾障子の完成です。
あまり省エネにこだわりすぎて、季節感を味わう心を忘れてしまっては取り返しのつかないことになりかねません。面倒で片付けてしまうのは簡単ではありますが、この風流を味わう心のゆとりはこれから先また見直されてくるのではないでしょうか。