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収納考 ほんとうに必要かどうかお客さまに決めてもらう![暮し向き9]
13収納考 ほんとうに必要かどうかお客さまに決めてもらう![暮し向き9]
今回も独断と偏見で、旧暦のお話から、入らせていただきます。
春分 次候 桜始めて開く
犀星忌(さいせいき)
ふるさとは
遠きにありて思ふもの
そして悲しくうたふもの
室生犀星(むろうさいせい)『小景異情』より
この一節を知ったとき、心の奥がキュッと締めつけられるような、切ない気持ちになりました。
生まれ故郷を出て暮らしたことがある方には、沁みるものがありますよね。
新年度を前にすると、この詩と進学のために上京したばかりの自分を思い出します。
というのは真っ赤な嘘です。
東京で生まれた自分には、そのような経験は全くありません。
大学の友人から聞いた話です。ですが、その話を聞いたときに想像から、まざまざとその光景が思い浮かびました。
東京での暮らしが長くなるにつれ、故郷からの距離が遠くなっていくようにも。少々センチメンタルになるのは、出会いと別れが交錯するこの時季だからなのかもしれませんね。
そして、桜始(さくらはじ)めて開く
今年も桜の時期がやってきます。春分の次候は、桜始めて開く(さくらはじめてひらく)。
と言っても、現在桜の開花宣言、今年は既に発令されました。例年より早目の開花ということになります。
例年の開花は、およそ3月25日から29日ごろの、七十二候の季節です。
花見にまつわる言葉はさまざまで、咲く花を見物しに訪ね歩くことを桜狩り(さくらがり)、あるいは花巡り(はなめぐり)といいます。
曇れば花曇り(はなぐもり)、寒ければ花冷え(はなびえ)です。
一昨日から昨日にかけては、まさに花冷えの気候になりました。今日はまた春暖炉が戻ってくれれるような気がします。
夜空を照らす篝火(かがりび)は、花篝(はなかがり)といいます。昔はライトアップの代わりに、ゆらめく炎とともに眺めていたんですね…。
ちらちらと舞い散る花びらが、辺り一面に散り敷かれた様子を、花筵(はなむしろ)と呼ぶのも風情のあることです。
コロナ禍の今年も桜の時季はやってきます。
収納考 ほんとうに必要かどうかお客さまに決めてもらう![暮し向き9]
リフォームをする際、お施主さんの今住んでいる家を一度は訪問します。大抵聞かれるのは、「いつ来られますか?」「納戸は見ますか?」「まさか押入れの中も見るんですか?」とみなさん口を揃えて聞いてきます。
「もちろん、全部見せて頂きますよ。押し入れなどの収納を見なかったら、いったい何を見るのですか」と私。
すると面白いことに約束の日までに一生懸命掃除をして、いらないものを捨ててくれます。
実はこの訪問は、お施主さん自らモノを仕分けしてもらうためのシナリオ作成なのです。
私のほうから「奥さん、同じモノは2つも3つも要らないから捨てましょう」ときつくいいます…ウソです!気の弱い私はそんなことお施主さんに言えません。(笑)
収納に関しては、私は無責任な建築屋です。どーんと大きな納戸を渡して、どうぞ自由にしまってくださいというスタイルです。
ですが、決まったモノに関しては、奥行き別に壁面収納をつくることもあります。もちろん、そのときは作らないこともあります。
でも大抵後から製作を依頼されます。いずれにせよ収納を活用してすっきりと暮らせるかどうかは、お施主さんしだいなのですから。
【必ず必要な収納】
家の中で必ず計画しておかなければならない重要な収納
[家の外用収納]
ガーデン用品や外用ほうき、雪かき用のスコップなど、家の外で使う道具などをしまう場所です。自動車や自転車、アウトドア用品なども含まれるかもしれません。
[家の中用収納]
家の中で使う道具などを入れるための収納です。何でもかんでも入ります。収納するモノは変わっていくので、棚はつくり込まずにどーんとスペースをとります。
[押し入れ]
幅をとる布団は、専用の押し入れが必要です。冬用夏用の季節の寝具、シーツや布団カバーの替え、来客用の布団などをここに収納します。
【用途による奥行き】
[壁面収納は用途により奥行きが変わります]
量がはっきり決まっているモノに関しては、壁面収納は効果的です。その際モノのサイズによって奥行きを変えると、すっきりと納まります。奥行きは6つに分類します。
【奥行きのあるものは納戸へ】
奥行き90cmに納まらない大きなモノは、納戸へ入れます。
[上手に納戸を使っている例]
玄関の横につくったシューズインクローゼットの例です。細かい棚のないざっくりとした納戸収納でしたが、お施主さんが自ら整理整頓し、すっきりと並べて入れています。市販のボックスや小物入れなどをうまく活用しています。
【ただし、動線の無駄も理解】
[シューズインクローゼットのある玄関]
流行りのシューズインクローゼットは、人が歩く動線部分にはモノを置くことができないため、収納の効率はいいとはいえません。
なので、お施主さんの要望があった場合のみつくるようにしています。特に狭小住宅につくるには無理があるので、お薦めしません。
[両サイドに収納のある玄関]
シューズインクローゼットをつくった上の場合と比べて、コート入れの分収納スペースが増えた上に、玄関も広々と使うことができます。どちらのほうがいいと思いますか?ちなみ私は断然こちらのほうがいいと思いますと言いたいところですが、それは狭小住宅の場合に限ります。シューズインクローゼットのある玄関を設計の中に組み込ませていただいたお宅は、例外なく喜ばれています。収納の量だけではないことを感じています。
【その他の収納】
隙間的な余白を利用する効率よい収納
[床下収納]
床下の収納は重いモノでも重量を気にすることなく使えて便利です。蓋になる部分を床と同じ素材だけで仕上げれば、よくある床下収納の格好悪いアルミ枠が見えるのは避けることができます。保湿性が高いので、さまざまな用途に使えます。
ただし、床の下になるので、モノの出し入れは大変しにくい部分でもあります。その上、蓋を開けた状態のときには大変危険な場所にもなります。
実際に、モノを出し入れしている最中に、宅配業者の訪問で蓋を開けたままになっていることを忘れてしまいました。
届いたモノを両手で抱えたまま、うっかり戻ってその中に足を踏み外して、大怪我をしてしまいました。
という危険もあることを十分に理解した上で、設置を検討することをお薦めします。
[小上がり収納]
リビング脇の小上がり和室につくられた引き出し。高さが35cmあるので、3畳分でもかなりの収納量があり、来客用の寝具も入ります。子どもが小さいうちは、リビング周りにおもちゃを置くことが多いのでちょっとした収納があると大変便利です。
[間仕切り移動収納]
キャスター付きで比較的簡単に動かせる移動方収納。複数の収納を並べたり、離したりして自由に空間を仕切れるので、家族構成や暮らし方が変わったときにも効果を発揮します。
大容量の押し入れサイズなら、家具をそのまま入れることも可能です。