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建物に凸凹を設ける機会は一度に限る【形状①】
今回も独断と偏見で、旧暦のお話から、入らせていただきます。
春分 初候 雀初めて巣くう(すずめはじめてすくう)
彼岸鰆(ひがんさわら)
魚偏に春と書いて「鰆(さわら)」。
サバ科に属する海水魚で、細長い体の大型の肉食魚です。
昔から冠婚葬祭に用いられた高級魚です。とくに西日本で好まれてきました。
「鰆」の旬は、秋から春にかけてですが、秋と春の彼岸に二度美味しく味わえることから「彼岸鰆(ひがんさわら)」といいます。
成長する段階で、呼び名が変わるので、いわゆる出世魚でもあります。
まだ若魚のころは、サゴシ(サゴチ)と呼ばれます。
そして、
大きくなるにつれてヤナギ、サワラと呼び名が変わっていきます。
美味しい「鰆(さわら)」は、身が固くしっかりしていて、目が澄み、体が銀色に光っているものを選ぶのがこつだそうです。
そして、雀が枯れ草や小枝、藁などを集めて、巣をつくり始める頃という七十二候の季節は、春分の初候、3月20日~24日ごろにやってきます。
雀が人家のそばに巣をつくるのは、つばめと同じで百舌鳥(もず)などの猛禽類や蛇など天敵が人間を恐れて寄り付かないようにするためといわれています。
瓦の形には、波があって、瓦と瓦の間に、雀の巣にちょうどいい隙間があります。
そこに巣づくりをするのですが、雀がひょこっと顔を出します。その可愛さはなんともいえないものがあります。
ところが、人間は、ひどいもので雀返しと言って、巣をつくれないようなものを施します。
私自身、頼まれるとやらざるを得ません。一番ひどい奴ですね(笑)
雀は、人の暮らしに最も身近な鳥ですが、農耕で生計を立てていたころは、穀物を荒らす害鳥とされたり、害虫の繁殖期には大量に餌としてたべてくれるので益鳥ともいわれてきました。
結局は、人間にとっての都合でしかないのですね。(笑)
建物に凸凹を設ける機会は一度に限る【形状①】
以前、ブログ「基本形の豆腐のような直方体をつくってみる〈規模2〉」で「建物の形はシンプルな四角形から始めよう」といいました。とはいうものの、実際にシンプルな形状のまま完成を迎える建物はほとんどないといってもいいかもしれません。
なぜなら最初に単純な四角形から始めたとしても、設計の
過程で四角形に出したり、引っ込めたりの凸凹を取り入れていくからです。
心地よい光や風をできるだけたくさん室内に取り込みたいー建物と外部環境との関係をより良好に発展させたいとき凸凹を取り入れることはことは思ってる以上に絶大な効果があります。
ただし、凸凹を導入するにはルールがひとつあります。それは、「凸凹を設ける場所は、一箇所もしくは二箇所以内にすることです」
凸凹の数が増え過ぎてしまうと、どうしても建物の形状が複雑化
してしまうからです。そして間取りを成約する条件が増えてしまいます。
建物全体の意匠もどんどんまとまらなくなってしまいます。凸凹は使い方次第で薬にもなれば、毒にもなる諸刃の剣なのです。
それでは、凸凹をどこに設けるのがいいのでしょうか?それは、誰にも正解はないのです。その場所、場所で決定的な凸凹を見つけるしかないのです。慎重かつ大胆に。
リフォーム前は、延床面積90坪以上の二階建てでしたが、一階の窓側意外の部屋にほとんど日が入らないため、ほとんど寝る時間以外は照明は点けっ放し状態でした。そこで二階部分を思いきって解体しました。大規模な減築リフォームです。そしてただの四角い箱を縦にずらすことにしました。横(東断面図)から見ると下記のようになります。↓↓↓
南面の壁をずらしたことにより、建物の真ん中が最も明るい部屋になりました。もちろんずらした壁の窓は自動開閉機能付きのため、真夏に風がない日でも重力換気で家の中を風が流れます。そして、もしも留守中でも雨が降ってきたとしても、雨水を感知して自動的に閉まります。
【凸凹の変形過程を書き残しておく】
建物をシンプルな四角形から変形させるときは、「どこを凸凹に変形させたか」がハッキリ分かるようにするのが秘訣です。変形の過程が見えると、デザインの意図が明確に伝わります。
そして幾何学的にまとまりのある形状として第三者にも認識されるのです。「ナぜそのような形にしたのか」が重要なのですが、それが不明瞭な建物は、建物依頼主の頭に不明な点が積み重なっていくだけです。
そのような不明瞭な状態が続くと、それ以外の提案(間取りなど)にも疑いの眼差しを向けられるのが関の山となってしまいます。
【凹凸の悪い見本は何と言っても「日本のベランダ」】
建物の形状を考える場合、最も厄介なのがバルコニーです。日本のバルコニーで最もオーソドックスなのが建物の南側に付けられる(設けられるではなく、敢えて…)奥行き半間(910mm)のバルコニーです。
ところが、このバルコニーは、洗濯物を干す以外の使い道がほとんどありません。デザイン的にも取って付けたような「後付け」の印象が強く残ります。建物形状の最悪の見本といってもいいかもしれません
【部分的に省いてつくるのがバルコニーのいい見本】
でも、日本の習慣では、洗濯物は外に干したいところです。そこでシンプルな箱をその部分だけ凹ませてつくるバルコニーがお薦めとなります。
凹型のバルコニーは外壁面から飛び出す「片持ち形状」とは違い、構造的にも問題なく、奥行きを広く取れます。広い奥行きが取れれば、物干し以外にも用途が格段に広がります。
バルコニーの上には必然的にに屋根ができるので、夏の高い日差し除けにも、雨水の対策にもなります。なんといっても、日本特有のガラバゴスベランダで損なわれてきた、建物全体の形状がスッキリするのではないでしょうか。
2階の角部分を凹ます
外壁を残しながら、南面の一部分を凹ます。
そうすることにより、真夏の南側の高い日射を遮りながら、東西の低い日射も遮ることができます。取って付けたような凸のベランダに比べて、エアコンの効きも雲泥の差だし、当然、省エネ効果も抜群です。
【凹型と意外に相性がいいのは、玄関ポーチ】
もうひとつ、凹ます形状が効果的なのが玄関ポーチです。ベランダやバルコニーと同じく、玄関ポーチにも屋根も庇もない建物をよく見かけますが、雨の日には思っている以上に大変だと思います。
ところが、シンプルな箱のいち部分をくり抜いてつくる方法なら屋根は必然的に存在します。さらに加えて、玄関ポーチに「半屋外空間」の機能も自然と備わるので、開閉時に家の中が外から丸見えにならないなど、たんなる玄関ポーチ以外にも用途が広がります。
【凹ますことで、玄関ポーチ以外の庇も兼ねる】
玄関とリビングが間取りによっては同じ方位(往々にして南多し)に面することもあります。そんなときは、玄関ポーチの庇とリビングの庇を連続して設けるとデザイン的にもすっきりします。玄関からリビングまで、ひとつながりに抜く方法です。