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基本形の豆腐のような直方体をつくってみる〈規模2〉
今回も独断と偏見で、旧暦のお話から、入らせていただきます。
物への感謝、針供養
2月8日は「御事始(おことはじめ)」(地域によっては「御事納(おことおさめ)」)。
厄日とされ、身を慎(つつし)み、仕事をせずに過ごす一日でした。
昔の女性にとって裁縫は大切な仕事であったため、やはり針仕事はお休み。
やがて折れたり曲がったりした古い針の労をねぎらい、感謝する「針供養」の風習が生まれました。
物にも魂が宿ると考えて、大切にしてきた先人の心持ちがよくわかるならわしです。
各地の神社やお寺では、針供養を行います。参拝者は使えなくなった針を行います。
参拝者は使えなくなった針をやわらかいコンニャクや豆腐に刺し、これまでの感謝を込め供養するとともに、さらなる裁縫の上達を願います。
そして、
基本形の豆腐のような直方体をつくってみる〈規模2〉
その敷地で建てられる建物の最大規模がわかったら、次にその形を単純かつシンプルな直方体に落とし込みます。間取りの検討に入るのはまだまだ先です。まずはその直方体から始めます。
①単純でシンプルな四角形を描きます。
建築可能な延床面積が25〜40坪程度(これくらいの規模が普通)であれば、まずは図のような長方形(四角形)を描いてみます。
「長方形タイプ」は短辺を3間以上、一方長辺を4.5間以上にすれば、それぞれ2部屋、3部屋が納まるようになります。
敷地形状に合わせて、正方形タイプにしても問題ありません。
長方形タイプ ↓
正方形タイプ ⇧
②高さはまずは、7,500mmに
単純シンプルな四角形を描き終わったのなら、次に高さを仮に決めます。
1・2階の高さを2,700mm(階高)ずつ取り、これに床下と小屋浦の高さを足すとおよそ7,500mmとなります。
これが高さの目安となります。
「豆腐(直方体)」の比率は1:2までに決める
平面と断面の寸法が決まれば、四角い豆腐(直方体)の完成です。なお、豆腐(直方体)の比率は1;1〜1;2の範囲に納めます。
あまり細長い長方形にすると建築費が上がるうえに、間取りの選べる範囲も制限されてしまいます。
①この範囲に納めるようにしましょう。
間取りを先行してしまうと「家がガタガタ」になってしまうのか?
街並み観ながら歩いていると、必ずといっていいほど、小さな屋根をこれでもかというほどたくさん掛けた一軒家を目にします。
上から見ると大変複雑な形をしています。どうしてこのような形になるかといえば、建物の形より先に間取りを決めてしまうからです。
勘違いした設計者や工務店が屋根は複雑にしたほうがカッコイイと思ってわざとやっている場合もありますけど…
必要な部屋を部屋単位でつくってしまうと、間取りは必ずガタガタになってしまいます。
当然、建物も複雑な形状になります。そして、小さな屋根をたくさん掛けなければならなくなるのもまた然りです。
ゆえに、豆腐(直方体)から始めなければならないのです
建築費が高騰する最大の原因は、建物の形が複雑になることです。複雑になればなるほどです。
その上、屋根にも当然凸凹が増えれば、建築で最も許されないとされる、雨漏りの危険性も格段に高まってくるのです。
また、構造の設計も難しくなります。そして、実際には、なによりも、デザイン性が最低となります。
複雑になれば、デザインのパフォーマンスが良くなると思っている人もいるかもしれませんが、そんなのは、最初のうちだけです。
シンプルイズベストといいます。長く愛され続ける建物に、変に複雑なモノはひとつもありません。
ですから、そんなわけで住宅の設計は、まずは、四角い豆腐(直方体)から始めるべきなのです。
「四角形+総2階+ゆるい片流れ」が基本
平面形状は四角形、断面形状は総2階(1・2階とも同じ床面積のこと)、屋根形状はゆるい片流れ。
好き嫌いはあるかもしれませんが、これが全てを削ぎ落とした、シンプルにして究極の建物形状の基本です。
さまざまな事情からシンプルにできない場合も多々ありますが、住宅の設計はまずはこれを基本に考えてみてください。
「建物は余分なものが削ぎ落とされた形になれば、なるほど、間取りの発想は自由になる」。これは、経験とキャリアを積んだ設計者であれば、誰しも実感している間取りの考え方なのです。