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「『和室』にはヒーリングパワーを秘めたつくり方があります」【和室CASE2】
今回も独断と偏見で、旧暦のお話から、入らせていただきます。
雨水(うすい)初候 土脈潤い起こる(どみゃくうるおいおこる)
歌舞伎の日
今日は歌舞伎の日です。
時は1607(慶長12)年二月二十日、場所は江戸城。
将軍・徳川家康と諸国の大名の前で、出雲(いずも)の阿国(おくに)が「歌舞伎踊(かぶきおどり)」を披露したとされています。
歌舞伎踊りは当時、爆発的な人気を誇った芸能で、その名からも分かるように歌舞伎のルーツ。これにちなみ、今日は歌舞伎の日です。
出雲阿国は出雲大社(島根県)の巫女(みこ)であり、社殿の改修費を稼ぐため、京都で歌舞伎踊の興行を行なったとされています。
その人気から将軍謁見の名誉にも預かったとされていますが、やがて踊りとともに行っていた官能的なサービスが大問題に。
その後、江戸幕府によって歌舞伎役者は男性に限定されることになりました。
男性が女性を演じる「女形(おやま)」という独自の役柄が生まれたのはこのためで、現代まで受け継がれています。
現在では、マンガやアニメの世界の「ワンピース」や「NARUTO」まで歌舞伎のお題目に連なっているんですね。
そして、雨水に入って最初の七十二候の季節は、土脈潤い起こる(どみゃくうるおいおこる)です。およそ、二月十八日から二十三日ごろまでのこと。
初春の雨が暖かく降り注いで、大地が潤い、目覚めていくという意味があります。土がぬかるみを帯び、地中で眠っていた生き物が顔を出すまで、あと少し。
土脈とは不思議な言葉ですが、人の体が脈打つように大地の中でも、たとえば地下水脈が流れ、地層が連なり、空気を含み、たくさんの生き物を抱えています。そんな生命の源として大地が脈打つ、その気配が湧いてくるようです。
「『和室』にはヒーリングパワーを秘めたつくり方があります」【和室CASE2】
まるで和風居酒屋になってしまった。新米設計士の勘違い。
10年ほど前に、あるお施主さんから、新米の設計士に任せたら、本格和室が和風居酒屋になってしまったので、なんとかならないかとのご依頼でした。
現場を見させてもらい、その新米設計士に話を聞いたところ、よくある食い違いが原因でした。
住宅の設計に携わってまだ間もない設計士が、「あまり予算はないのだが、できる限り最高の和室をつくってもらいたい」とお施主さんから頼まれたのが発端でした。
その新米設計士は、そうであればと京都の極上の和室を見に行き、部屋の寸法を書き取り、そのまま図面化するという荒技をやってしまったらしいのです。
そして、完成した際に、そのお施主さんから「和風居酒屋じゃないんだからー!」とお叱りを受けたそうです。
その後は私のところに相談に来られたというわけです。
本物不在、偽物だらけの現在でも、建築物は、こぶしを軽く握って「コンコンとたたけば」本物か偽物か一目瞭然です。
形や見かけだけは国宝級の和室のコピーですが、低予算ゆえの材料は、壁の下地が最低厚の合板材で、仕上げは聚楽壁(じゅらくかべ)をプリントしたビニールクロス貼り。
天井も秋田杉の木目をプリントした天井材でした。これでは安っぽい音しかしないのは当然といえば、当然です。
[和室の感触は、自然素材からしか生まれません]
ところで、本物の和室の材料には、自然のパワーがどれくらい含まれているのでしょうか?
檜(ヒノキ)やヒバの精油に含まれるヒノキチオールには、防ダニ効果、抗菌効果が認められています。
杉の香りにはフィトンチッドという物質が含まれ、沈静作用、抗菌作用があるとされています。
ですから、和室にいるだけで日常的にアロマ効果で癒されていることになるのです。
当然かもしれませんが、農薬などの薬剤に汚染されているものはこの限りではないことをご了承くださいね。
また、壁面は部屋の中で一番広い面積を占めますので、材料にはもっとも気を使いたいところです。
本来、和室の壁には塗り物が使用されています。塗り物とは左官職人さんによって、鏝(こて)で泥などを壁に塗り付けたもので、壁一枚を目地(めじ)(継ぎ目)なく仕上げることができます。
昔の和室の壁は、竹と藁縄で編んだ小舞(こまい)という下地でつくりました。
現在ではプラスターボードの上に塗り物を塗りつける工法が一般的にとられています。
塗り物の仕上げとしては、漆喰(しっくい)や聚楽土(じゅらくつち)、プラスター、最近注目されている珪藻土(けいそうど)などがあります。ただし、
※注1 珪藻土に関しては、アスベストのような有害物質の可能性があるとされていますので、リフォームの計画などあるかたは、様子を見ておいたほうがいいかもしれません。※
壁は、日常生活で頻繁に触れるところであり、その上面積が大きい部分です。せめて和室くらいは、自然素材だけを使った安心できる塗り物で仕上げたいところです。もちろん全体であれば、なおいいと思います。
いずれの材料も自然素材で、シックハウスなどの心配も少ない(※注1除く)ものです。また、これらは断熱性、防湿性に優れていますし、漆喰は、空気の浄化作用もあるとされています。実際、漆喰などの工事後、ペットの匂いが気にならなくなったとの声を何件も伺っています。
【塗り壁材の種類】
漆喰壁:
消石灰と砂を原料とし、(海藻)糊と麻の繊維質を水で練り上げたもの。耐久性・耐火性・調湿調整に圧倒的に優れ、はるか昔からお城や土蔵の内外壁などに使われていました。
プラスター(石膏):
石膏を水で練り上げたもの。収縮による亀裂が生じにくく、仕上がりの白さが美しい。ただし、吸水性が高いので、水廻りには不向き。
土壁:
土と砂、水を混ぜて練り上げた壁の総称。ザラッとした柔らかさ、温かみのある色合いが特徴的です。土の種類・調合や仕上げ方法などによって分類される、以下の3つがその代表例。
聚楽壁:京都付近で取れる土でつくった壁。豊臣秀吉も頻繁に使ったとされる。
大津壁:滋賀県の大津で産出された土と石灰と麻を混ぜたもの。表面がつるっとして、大津磨き施をした壁は光沢があり、最高級の壁とされている。
珪藻土壁:珪藻土はプランクトンの死骸なので、細かい穴が開いていて、吸湿、吸音、断熱性などに優れるされます。有害物質を吸着・分解するため、最近特に注目を集めています。※注1参照。
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珪藻土って何かな?
最近流行の珪藻土。決して珍しい材料ではなく、サンマを焼く七輪と同じ素材。藻類の一種である珪藻の殻の化石が原材料。
安眠作用
ストレス解消
ヒノキの香りは芳香剤
ヒノキの部屋で寝ると、不思議とよく眠れるといいます。実はヒノキの精油に含まれるヒノキチオールは、アロマに使われる芳香剤なのです。
【地窓の効果】
地窓は、仄暗い中に床の間だけに光を入れ、空間を引き締める役目をします。また、地窓の外に小さな庭などを設けると視線が広がり、部屋が広く見えます。これは狭小住宅などでよく用いられる手法です。
【和室の心地よさを生み出す「ほどよい明るさ」】
材料や工法だけでなく、和室の心地よさを感じさせる要因のひとつに、「ほどよい明るさ」があると思います。和室の適度な明るさは、どのようにして生み出されるのでしょう?
一番の要因は、日本家屋は軒の出が深いため、日光が直接部屋に入らないことです。一度地面などに反射した光を障子が受け止め、透過した光が部屋の中に入ってきます。
次の要因は、壁の材質にあります。土壁の表面は粗いので光を吸収します。そのため壁からの反射光が少なく、壁の色合いと合った電球色を使用することで柔らかく明るい部屋に演出してくれます。
また、和室の特徴的な採光の方法に、「地窓」があります。これがあると、低い位置から床の間に光が差し込むので、床の間が浮き上がったような見え方になり、部屋の中に穏やかな雰囲気を与えてくれます。
ひと口に和室の良さと言っても、デザインや形だけでない遥かなる年月の経過が生み出した奥深い「和の技」が潜んでいるのです。