BLOG
ブログ
「法律制限デザイン」からの脱却〈屋根①〉
今回も独断と偏見で、旧暦のお話から、入らせていただきます。
雨水(うすい)次候 【霞始めて靆く(かすみはじめてたなびく)】
菜種御供(なたねごく)・梅花祭(ばいかさい)
神様に菜の花をささげ、慰めるならわしがあります。
天神様(菅原道真)を祀(まつ)る亀戸天神社(かめいどてんじんしゃ)(東京都)で行う、「菜種御供」です。
学問の神さまとしても知られる菅原道真は、政敵の謀略によって太宰府(福岡県太宰府市)へと流されました。
失意のまま道真が亡くなったのは、903(延喜3)年。2年後に建てられた祠廟(しびょう)が、太宰府天満宮の始まりとされています。
一方、亀戸天神社は1646(正保3)年に、太宰府天満宮の神官によって創建されました。
今日、2月25日は、菅原道真の忌日(きにち)。亀戸天神社では、「なだめ」に通じる菜種(菜の花)を供え、遺徳を偲(しの)びます。
太宰府天満宮では、菅原道真が好んだ梅の花をささげる「梅花祭(ばいかさい)」が。こちらも花で神さまを慰める、風情あふれる神事です。
そして、
霞始めてたなびくは、七十二候で雨水の二番目の季節です。およそ二月二十四日から二十八日にかけて、春霞がたなびき、野山の景観もまた春めいてくるころをいいます。
霞とは山や野にたちこめた水蒸気が、景色をぼんやりとかすませた状態です。
薄霞(うすがすみ)、遠霞(とおがすみ)、朝霞(あさがすみ)、有明霞(ありあけがすみ)、霞の浪(かすみのなみ)、霞の奥(かすみのおく)、霞の麓(かすみのふもと)、草霞む(くさかすむ)…など春ならではの眺めとして、霞にまつわる情景にはさまざまな呼び名があります。
春なれや名もなき山の薄霞 松尾芭蕉(ばしょう)
「法律制限デザイン」からの脱却〈屋根①〉
街中を歩いていてふと上の方を見ると、周りのビルやマンションの壁面がどれも同じような角度で傾斜していて不思議に思ったことありませんか?
なぜ、同じ角度に削られているのでしょうか。あれは、デザインの偶然なのでしょうか?
もちろん違います。
法律上の制約にしぶしぶ従った結果、あのような奇抜でグロテスクな光景が出現してしまったのです。
建物の上部が斜めになるのは、建築基準法が定める「斜線制限」の仕業。
周囲の建物に日当たりや痛風を確保するための絶対的で最小限の決まり事です。
斜線制限は、当然ですが、住宅にも適用されます。
主に屋根の形(勾配)ですが、これは斜線制限を無視して決めることはできません。
そうだからといって、「屋根の勾配を斜線制限ギリギリのラインに揃える」。せめて、この横並びデザインだけは脱却してみませんか。
法律が定めるラインに合わせただけの屋根勾配は、もはや設計でもデザインでもありません。第一、すっごく格好悪いと思いませんか。これからは「法律制限デザイン」からは脱却する方針でお願いします。
【豆腐(直方体)を削る斜線制限】
豆腐の角を2回削る
一般的な住宅の場合、建物の上部を斜めにカットする斜線は「道路車線」と「北側斜線」の2つです。
法律が定めるこの斜線より上に、建物がはみ出すことはできません。建物の大きさを決めるボリューム出しの作業でシンプルな直方体をつくったら、即座に斜線からはみ出す2面を確認し、カットしておきましょう(斜線制限には各種緩和規定が使えます)。
【「高度地区の制限」があると、それ以外にも削られる】
特に都市部に多いのですが、敷地の場所によっては通常の斜線制限よりさらに厳しい規制(高度地区の制限)が適用されます。
これに引っ掛かると豆腐を削る量がさらに増えます。場合によっては3階建ての計画はかなり難しいと思います。やってやれないことはありませんが、おそらく3階の部屋では立って生活は不可能だと思います。
大都市の狭小敷地が「第一種高度地区」に該当すると3階建の建設計画は厳しいかもしれませんね。
第二種高度地区ならなんとかなるかも!?
【ヘアスタイルは、なるべく格好よく刈りこみたい】
直方体に絶対的なカットを入れたら、次にヘアスタイルを整えます。デザイン的に余計な部分をカットして、建物全体のプロポーション、屋根の形状を整えます。人が美容室に行くのと同じことです。
欲張ると「面構え」が不自然に
屋根の形状を決める際は、あまり欲張ってはいけません。たまに、いかにも「斜線制限ギリギリのラインで切り取りましたという住宅にお目にかかりますが、法律で許される容積を目一杯使おうとすると、建物全体が不自然な面構えとなります。
非対称でもバランスよければOKです
屋根は建物全体のバランスを安定させる形状が基本です。多少容積が減ったとしても、思い切って削ってしまいましょう。個人的には、切妻か、片流れがおすすめです。
左右対称の切妻型なら安定感が抜群なのですが、左右非対称でもバランス次第ではOKです。
美しい屋根をつくる「引っ張り上げ」
屋根は、建物の上部に「載せるもの」というイメージを持たれているかと思いますが、その発想で屋根をつくると、建物形状と間取りの連携が悪くなります。
屋根は「建物の一部分を引っ張り上げ、その下の空間をより豊かにしていくもの」というようなイメージでつくっていくと、間取りとの関係が良好となります。
基本的には、建物の真ん中あたりを引っ張り上げます。リビングが2階にあるなら、リビングの上を引っ張り上げると効果的です。
真ん中ではなく、あえて建物の端部を引っ張り上げることもありです。こうすることで、高くした屋根の下を2層にできるので、空間の立体的な活用がねらえます。
まとめ:間取りのことも考えながら、引っ張り上げる