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二つ以上の用途を兼ねることを極めれば道は拓ける…!(かたちと構造PART7)
二つ以上の用途を兼ねることを極めれば道は拓ける…!(かたちと構造PART7)
今回も独断と偏見で、旧暦のお話から、入らせていただきます。
霜降 次候 霎時施す(しぐれときどきほどこす)
柿の木と初夜
昔は、柿の木は、初夜の合図に使われていたんですね。⁽⁽ଘ( ˊᵕˋ )ଓ⁾⁾
秋の果物といえば、柿。ビタミンCが豊富で、二日酔いに効くタンニンも、そんな柿には昔、女性が嫁入り先に苗木を持って嫁ぎ、植える慣習がありました。亡くなったときには、その柿の木を火葬の薪や骨を拾う箸にしたそうです。
また新婚初夜には、柿の木問答という慣習がありました。
「お前さんの家に柿の木はあるか」と夫が訊くと「あるよ」と妻が答えます。
「よく実がなるか」「うん、なるよ」「オレが取ってもいいかい」「どうぞ」とやりとりしてから夫婦の契りを交わしました。
柿は八年ほどで成長して、実をならせますが、それからは、あの美味しくて、身体にいい柿を毎年たくさん食べられるってことで、嫁入り道具として持って行ったのも肯けますね。
そして、今月末の二十四節気、霜降(そうこう)の次候は、霎時施す(しぐれときどきほどこす)。時雨(しぐれ)が降り出すという意味の季節で、およそ十月二十八日から十一月一日ごろのこと。
ふいにザアッと降ってきては、カラリと上がる時雨(しぐれ)。なかでもその年の初時雨は、秋の終わり、冬の到来を告げる兆しといわれます。山の近くに降ることが多く、山から山へと白い雨脚が移っていくさまから、山めぐりとも呼ばれます。
しぐれふるみちのくに大き仏あり 水原秋櫻子
秋の終わりには、まだ日がありますが、その兆しです…ついこのあいだ夏の終わりが来たばかりなのに、秋の終わりの兆しなんて、ほんとうにつかの間の季節ですね。
二つ以上の用途を兼ねることを極めれば道は拓ける…!(かたちと構造PART7)
一般的な木造住宅の場合、木材の湿気対策は重要な要素となります。そして法令上も地面から土台までの距離をとることが義務付けられています。
地面から1階のフロアレベルまで階段にして2段分くらいの差が生じることあります。そのため安全を考えて手摺を設けたりしますが、いかにも手摺という部材を玄関に持ち込みたくはありません。
さりげなく存在するという意匠にしたいものです。
そこで以前、下駄箱の天板の縁に楕円形の断面の丸棒を廻してみたことがありました。そのときは、手摺の用途としては思っていなかったのですが、お施主さんが、その下駄箱の手摺に掴まって上がり框から上がっていました。
「この下駄箱便利なのよね」とお施主さんは仰られていたのです。
その以来、玄関収納のカウンターを収納面よりも6cm程度せり出すデザインとして、玄関の土間から1階まで上がるとき無意識に手がかり(手摺)としても機能するようにしています
収納と手摺の用途を兼ねていますが、それぞれの存在感を消すことで、さりげない美しいデザインに仕上がるのです。
【敢えて存在感をなくした手摺】
①玄関収納(下駄箱)の中桟兼手摺カウンターです。意図的に他の用途を兼ねることで、通常は玄関スペースに溶け込み、存在感を消し去ることができます。
②玄関の高低差に対して使い易さを考慮してフロアレベルから80㎝の高さに手がかりとなるカウンターを設けました。手がかり部分は汚れにくい自然塗料で仕上げるとよりそこの空間に溶け込みます。
③玄関収納のカウンターを収納面よりも6㎝程度せり出すデザイン形状にしています。玄関の土間から1階のフロアレベルまで上がるときに無意識に手がかり(手摺)として機能します。
【全身の「プロポーション」を極める】
家づくりには全体のプロポーションが肝心です。プライバシーを守るためとはいえ、日本では敷地いっぱいに高い塀を巡らせている家を多く見かけます。
とくにそのような家はバランスが崩れ、孤立した住まいになりがちです。
敷地内の緑も自分の家の室内だけから庭を観るという一方的な考えではなく、道行く人々からどう見えるか、感じるかという視点を持つ必要があります。
狭小の敷地に建つ小さな住まいの事例を取り上げましたが、敢えて塀を設えずアプローチの緑を街に開放させながらも、下がり壁によって家を出入りする家族のプライバシーも適度に守られるアプローチスペースになっています。
【バランスを大切にすることが、家づくりの秘訣】
⇒①そこに住む人や設計者の目線だけでなく、施工者の視点、道行く人々や近隣からの視点など、さまざまな見方や考え方、そしてバランス感覚をもつことが大切なのです。
⇒②塀を設えず建物の足元を浮かせて敷地内の緑を開放しつつ、同時に内露地の足元に光と緑を挿入する。さらにはプライバシーを蔑(ないがし)ろにしない設計や計画を目指しましょう。
⇒③狭い場所での植栽は光や雨、風の抜けなどの注意を怠るわけにはいきません。ヤマボウシの前を格子にして、もちろんこの部分には屋根は敢えて設けません。