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「在宅避難の備え」の薦め
日本列島の北や南で大きな地震が続いています。
また、海面温度の上昇による超大型台風の脅威も増しています。
大災害後の生活というと小中学校の体育館に設けられた避難所でのプライバシーのない難民のような避難生活と、災害後数週間後に建設が始まる応急仮設住宅での「狭くて、夏暑く、冬寒い生活」を考えると気が滅入りますね。
東京都の想定では、首都圏直下型で震度7の地震が発生した場合の死者数は約1万人と予想され、死因の6割が建物倒壊によるものと想定されます。
多くの倒壊や火災滅失が予想されるいっぽう、地震後には少なくとも140万戸ほどの木造戸建住宅と、45万戸ほどの木造共同住宅が被災の程度はともかく、都内に残ることになります。
そして都内で避難所2,937か所、二次避難所(福祉避難所)1,209か所が確保され、避難所の収容人数は330万人と予想しています。
避難所の収容人数には被災したマンションや木造住宅の50%の人数しか含めておらず、これ以外の人は在宅避難をするものと想定されています。
災害時には避難所ではなく「在宅避難」が求められる
在宅避難という言葉が明確になってきたのは東日本大震災以降です。
それまでは救援物資は避難所での避難者を対象としていましたが、東日本大震災では在宅避難者にも例外的に届けられるようになりました。
そして東京都に限らず全国の自治体では避難所の確保が難しく、「できるならば在宅避難をして欲しい」という立場から、在宅避難を勧めようとしています。
在宅避難する場合、その日の明るいうちに近くの避難所に出向き、避難者としての受付登録が必要です。
その際、避難所の避難者とは別に受付が行なわれ、避難者名簿や防災情報システムに「在宅避難者」として登録でされます。
また、給食や物資配給の情報は外部の方にもわかるよう掲示されるので、必要ならば見に行くようにします。
それぞれの自治体では、備蓄物資は避難所となる小中学校に備蓄しているので、在宅避難者だけでなく車中等で避難生活を送っている人も不足物資を避難所に頼ることもできます。
また避難所では、避難所の早期解消や学校機能回復のため、避難している住民に対しても自宅に戻るよう促すアナウンスが行われます。
貴社のOB客の大半は半壊以下となり、「在宅避難」となる
阪神・淡路大震災では住宅・建築物の倒壊による大きな被害が見られましたが、特に新耐震基準が導入された1981年(昭和56年)以前に建築されたものに大きな被害が発生しています。
首都圏の工務店インタビューでOB施主の住宅の80%以上は1981年(昭和56年)以降に建築されたものとなっていました。
つまり、貴社のお客さん(OB客)のかなりの住宅が、今後来るであろう大震災にあっても半壊はあってもそれ以上の倒壊は起さないはずです。
したがって、さまざまな機会を通じて貴社が建てた住宅に居住するお客さんに、在宅避難のための準備を薦める必要があります。
被災後に貴社の担当者がお客さんの家の被害状況を見てまわり、避難所に行くべきかを判断してあげられれば安心してくれると思います。 (資格が必要なら取得しておきましょう)
そして、その住宅に在宅避難を進める上で不都合が生じている場合は、貴社が「応急修理を行うための準備を整えている」こともしっかり伝えるようにしましょう。
お客さんに伝えたい8つの「在宅避難」準備
今後、ニュースレターやホームページでの告知をされる際に、以下の情報を伝えて、在宅避難の準備を行っていただくよう呼びかけましょう。
1 避難所に行けば何とかなると思っていませんか?
避難所に行けば支援物資などが届き、生活がなんとかできるに違いありません。
しかしその一方で、①盗難や窃盗、②痴漢行為などの性犯罪、③いざこざ、④感染症の危険、などが避難所で実際に起こっています。不眠になったり、便秘になったり、体調不良になってしまう人も少なくありません。
また、家族のための大量の備蓄食料などを避難所に持ち込んだ際に、他の避難者にも行き渡るよう「供出」を促す同調圧力(実質的な没収)があったという経験談もあります。
このようなリスクを考えると、たとえライフラインがストップ(停電や断水)していても自宅に留まって生活する「在宅避難」を行えるよう、普段から準備を進めておくべきです。
2 家具や冷蔵庫の転倒防止
家具が転倒すると避難の邪魔になるだけでなく、怪我の原因になります。
冷蔵庫は大きなクーラーボックス(高断熱な構造)であり、在宅避難時の食料備蓄庫でもあるので、転倒しないよう対策を行っておきましょう。
冷蔵庫の底には運送や配置換えの便を考えてキャスターが付いていますが、地震の揺れで容易に大きく移動することがあることから、脚の部分のロックを行うとともに、転倒防止対策を実施する必要があります。
ベルト式金具などの取り付けが可能かを相談するとよいでしょう。
3 在宅避難のための被災後の掃除用具を用意
室内には窓ガラス以外にも照明のガラス管や食器類、装飾類の割れ物が意外と多く散らばります。
壊れた家具を排除する際にも、ガラスを触ってけがをすることが少なくありません。
けがをすることなく、寝る場所や食事ができる空間を確保するには、暗くなる前に後片付けと掃除を始めなくて はなりません。
普段なら電気掃除機が使えても、災害時は停電で使えません。
そのため、「ほうき」や「ちり取り」など、電気を必要としない昔ながらの掃除道具がどうしても必要です。
また、とがった物を掴んでもけがをしにくい「突き刺し防止手袋」と、ガラスを踏んでもけがをしない「安全靴」、破損物を破棄するのに役立つ「ガラ袋・土のう袋」が必要です。
次に役立つのは、細かいガラス片を取り除く「粘着ローラーやガムテープ」です。
これで床がきれいになったように見えますが、ガラス片の見落としがあるかもしれないので、念のために「ブルーシート」を敷くのもよいでしょう。
窓ガラスが破損し、窓枠に破損した残りのガラス片があれば注意しながら取り除き、その後、ブルー シートで窓を覆い、強力な粘着力のテープでブルーシートを固定します。
これで雨風の侵入を応急的に防 ぐことができます。
さらに、不審者の侵入を防ぐために窓際に大きな家具を移動させてバリケードのよう に置けば、より安心です。
4 在宅避難のための調理・加熱器具 (カセットコンロとガスボンベ)
IH クッキングヒータの場合は早ければ1週間で使えるようになりますが、ガスの場合は復旧までの約1カ月間は、カセットコンロを使って料理をすることになり、そのためのボンベの備蓄が必要です。
1日3食作るのに使った場合は1本のボンベで 2日分、1週間なら4本程度、1カ月では15本必要です。
缶が腐食しないかぎり期限なく使えるので、しっかり買い置きしておくようにしましょう。
電気が使えるようになったら電子レンジでほとんどの料理ができるので、普段から電子レンジ調理を試みておくのもよいでしょう。
●キッチンバサミと皮むき器 まな板を使わずに切る「空中調理」をすると衛生的に料理をすることができます皮むき器は空中調理ができるだけでなく、薄く切れて火がとおりやすくなるので、燃料の節約になります
●ラップやポリ袋 ラップをお皿に、ポリ袋をおわんに敷くことで水の節約ができます
●アルミホイルとクッキングシート フライパンに敷くことで、水の節約ができます
5 在宅避難のための飲料水と食料の備蓄
災害時は電気・水道・ガスといったライフラインの停止に加え、物流機能の停止により食料の供給も滞ります。
一般的には、災害支援物資は災害が起きてから3日ほどで到着することが多いです。
しかし、大地震などの大規模な災害の場合には、1週間以上かかるケースも少なくありません。
農林水産省によると、大人2人の1週間分の備蓄食料の例は以下のとおりです。
水2リットル×6本×4箱、
米4kg(無洗米)、インスタント味噌汁、乾麺(うどん・そば・パスタなど4袋)、缶詰(18缶)、レトルト食品(カレー・牛丼・パスタソースなど24個)、日持ちする野菜(玉ねぎ・じゃがいも等)、梅干し・のり・わかめ、調味料(醤油、砂糖、塩など)
水は1人あたり1日3リットルが目安です。
乳幼児、高齢者、アレルギーがある人は、症状に配慮した備蓄食料を準備しましょう。
6 コック付き20リットルタンクの用意
飲料水は1人1日3リットル必要ですが、食器洗いや手を洗ったりする水は含まれません。
多くの自治体で応急給水を行う場所は、避難所でそこまでは住宅密集地ならば10分程度、在宅避難者が多い郊外ならば、給水場所まで20分以上かかる場合も想定されます。
飲料水のために「コック付きの20リットルポリタンク」がホームセンターなどで売られていますが、台所の作業台の上に置くと水道の代わりとなって便利です。
また給水場所からの運搬には、折りたたみキャリーなどが必要です。
7 絶対に必要な「抗菌消臭トイレ処理セット」
震災で水洗トイレを使用しない時にお薦めしたいのが「抗菌消臭トイレ処理セット」です。
なによりも使い慣れた自宅のトイレで用を足せるのがありがたいです。
凝固剤と便器にかぶせるポリ袋がセットになっているものがいいでしょう。
用を足した後に抗菌性凝固剤を振りかけ、可燃ごみとして処理できます。
既存の便器やポータブルトイ レに排便袋をかぶせて使用するので、トイレが汚れる心配もありません。
上下水道の復旧は30日と想定されているので、それまでの1ヶ月間を乗り切れるだけの備蓄(1日に1人平均7回トイレ×人数×30日)が必要です。
8 忘れるわけにいかない「トイレットペーパー」
経済産業省は、日常用とは別に1か月分程度のトイレットペーパーを備蓄することを薦めています。
とくにトイレットペーパーの国内生産の約4割は静岡県で行われており、東海地震等で静岡県が被災した場合はトイレットペーパーが全国的に深刻な供給不足となるおそれがあります。
4人家族で必要となる1ヵ月分のトイレットペーパーを備蓄するには、シングルなら15ロール、ダブルなら30ロールが必要です。
節水&洗い物の出ない「在宅避難」料理教室を開催しよう
子供たちの夏休みの宿題(自由研課題)の提出を兼ねられるイベントとして、「親子でつくる在宅避難料理教室」を開いたらどうでしょうか。
貴社が用意したレシピと在宅避難のための知識が書かれた「実験ノート」に記入しながら行うようにしましょう。
最小限の水しか使わない「節水料理」、まな板を使わない「空中料理」、 電気釜を使わず炊飯する「カセットコンロ料理」は、常雇している職人さんの家族にとっても役にたつイベントになります。
1 鍋で炊くご飯とレトルトカレー 2人前の材料:無洗米一合、レトルトカレー2袋、水200ml
・お米は鍋に入れて分量の水に30分ひたしてからご飯を炊く。強火で沸騰してきたら弱火で10分
・10分経ったら5秒程強火にしてから火を止めて10分蒸らす。蓋を開けたら全体をさっく り混ぜてできあがり
・フライパンにアルミホイル2枚をお碗のように敷き、レトルトカレーの袋を開け入れて2分ほど温める
・サランラップかアルミホイルで包んだお皿(洗わずに片付けられる)にご飯を盛り付け、カレーをかける
2 鍋で炊く焼き鳥缶で炊き込みご飯 2人前の材料:無洗米1合、焼き鳥缶1缶、水200cc(缶詰のテレや野菜から出る水分は引く)、人参・大根・エノキ・シメジなど冷蔵庫の残り物野菜を適量
・野菜はキッチンバサミで適当に細かく切る ・水で浸しておいたお米に焼き鳥缶と切った野菜を加える。
・強火で沸騰して吹きこぼれそうになったら弱火で10分
3 短時間でスープパスタ 2人前の材料:早ゆでパスタ160g、 クラムチャウダースープの素2袋、水400cc
・鍋で水を適量沸かす ・沸騰したら鍋に入れやすいようパスタを半分に折ってからゆでる
・3分(パスタによって決められているゆで時間に合わせる)たったら火を止め、スープのもとを入れ、だまにならないようによくかき混ぜる。
水が貴重な中、パスタのゆで汁を捨てずにインスタントのスー プのもとを入れてスープパスタにできる
4 短時間で炒める焼きそうめん 2人前の材料:素麺100g、ツナ缶1缶詰、キャベツ1/8、ネギ少々、油適量、
水100cc、塩・胡椒適量
・フライパンに油を敷き、ツナ缶(オイルも使用)とキッチンバサミで細めに切った野菜類を炒める
・そこに麺を半分に折って入れる ・水を振り入れ、軽く混ぜたら蓋をして2分ゆでる
・麺がしんなりしてきたら箸で麺と具を絡めつつ水分を飛ばし、塩胡椒で味を調える。
…これらはほんの一例です。ネットなどで魅力的なメニューを厳選し、実行してみてください。